〔研究者コラム〕ー「花粉症(第2回)」 発病までのしくみー

全6回シリーズで、「花粉症」に関するコラムを紹介しています。紹介するのは、福岡大学筑紫病院耳鼻いんこう科の坂田俊文准教授です。研究分野は「耳鼻咽喉科学」で、福岡大学筑紫病院耳鼻いんこう科の診療部長を務めています。

坂田准教授のプロフィールや研究情報等については、こちらからご覧ください。

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【第2回 「発病までのしくみ」】

花粉症などのアレルギー性鼻炎では、IgE(免疫グロブリンE)というタンパク質が主役となります。体内には異物の種類によって決まったIgEが存在し、侵入した異物を効率よく処理します。ところが処理の過程でさまざまな化学物質が過剰に放出されるため、不快な症状が発現します。

少し詳しく述べますと、花粉症の発病までには2つの段階があります。第1段階では花粉が繰り返し侵入することで、花粉に特異的なIgEが産生され蓄積されます。花粉の成分(抗原)が体内に侵入すると、マクロファージというアメーバのような免疫細胞に食べられて処理されます。この時、マクロファージはサイトカインという伝達物質を放出して、リンパ球(リンパ濾胞〔りょほう〕型T細胞や2型ヘルパーT細胞)を刺激します。そして刺激されたリンパ球は抗体産生細胞(形質細胞)に命令して花粉に特異的なIgEを産生させます。つまりマクロファージは今後の花粉侵入に備えて、IgEという援軍を養成するのです。これらのIgEは鼻粘膜に存在するマスト細胞(肥満細胞)の表面にたくさん付着しながら蓄積され、花粉の侵入を待ち構えます。この状態を「感作」と呼びます。

第2段階は、感作した人の鼻粘膜に花粉の成分(抗原)が侵入することで始まります。侵入した抗原はマスト細胞上のIgEと結合し、処理される運命にあります(抗原抗体反応)。この時、マスト細胞の中から多種の化学物質(ヒスタミン: Hi、ロイコトリエン: LTs、プロスタグランディンD2: PGD2、トロンボキサンA2: TXA2など)が放出され、末梢神経を刺激する結果、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどが起こります。さらに、抗原抗体複合物ができると、それを処分するために少し遅れて好酸球が集まります。ところが、好酸球からも化学物質が放出されるため、鼻づまりがさらに増強します(遅延相反応)。

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