12月も半ば。街はクリスマスムード一色になっています。今回は、「クリスマス」をテーマに、3人の先生がコラムをお届けしています。第3回は引き続き人文学部ドイツ語学科の有馬良之准教授がお届けします。
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- 第1回:クリスマスってそもそも何?
- 第2回:光を求める季節
クリスマスを待ちわびる子どものためのもう一つのアイテム「アドベントカレンダー」は、日本でももうかなり親しまれてきているようです。多くの場合12月1日から24日まで、ある「窓」を毎日1つずつ開けていくと、中にお菓子やおもちゃが入っている、というものですが、これも実はドイツ起源のものです。現在のものの原型は20世紀の初頭にミュンヘンの印刷業者、G.ラングが作り、これが第二次世界大戦後、大量生産されるようになり、ドイツ国外にも広まっていったのです。
さて、いよいよクリスマスまで良い子でいた子どもにプレゼントを持ってきてくれるサンタクロースの出番ですが、これがなかなか複雑な歴史を持っています。サンタクロースの名前のもととなった聖ニコラウスは、3世紀後半に生まれた小アジア(現トルコ)のある町の司教だった実在の人物です。彼は財産を貧しい人に分け与えたりしたことにより聖人に列せられ、彼の命日、12月6日が彼の祝日と定められました。
彼にまつわる伝説には、娘を嫁がせるための持参金がない父親の嘆きを聞き、ニコラウスが夜にその家に金塊を投げ込んだところ、それが娘の靴に入ったというものがあります。現代の靴あるいは靴下の中にサンタがプレゼントを入れるという風習もこの伝説に基づいているのです。従ってドイツでは16世紀半ばまで、全域で(現在ではカトリックの勢力の強い南部で)聖ニコラウスがプレゼントを持ってくるのは12月6日だったのです。
さて、ではいつからそれが24日、クリスマスイブに変わったのでしょう。ここでまた一人のドイツ人が登場します。宗教改革者マルティン・ルターです。聖書至上主義を唱えた彼は聖書に書かれていない聖人の崇拝を否定し、"Christkind"(幼児キリスト)がクリスマスイブに贈り物を持ってくるというアイデアを思いついたのです(ルターも子どもへのプレゼントそのものを廃止するつもりはなかったようです。またそしてこのアイデアを思いつくまで時間がかかったのか、彼の家庭でも、バチカンに反旗を翻した後も20年程は聖ニコラウスの日に子どもにプレゼントをしていたそうです)。
このように見てくると、現在われわれが習慣として祝っているクリスマスの作法には、ずいぶんと多くのドイツ由来のものがあることに驚かされます。しかし、現在のドイツでは、クリスマスの宗教的な意義も薄れ、むしろ家族の再集合の時という役割が大きいように思われます。その意味では、日本とドイツではクリスマスと正月(大晦日~元旦)の意味がちょうど正反対といえます。日本は正月、ドイツはクリスマスに遠くにいる家族が集まり、日本ではクリスマスに、ドイツでは大晦日の深夜に友人同士集まりにぎやかに過ごします。
皆さんは今年のクリスマスをどう過ごされますか?
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