〔研究者コラム〕ー「法律と年齢(最終回)」年齢で差を設けることは差別になる?ー

全4回シリーズでお届けしているコラム「法律と年齢」は今回で最終回です。コラムを担当するのは、桧垣伸次准教授(法学部)です。

2015年6月、選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き上げられることが決まりました。選挙権年齢が引き下げられるのは70年ぶりということもあり、大きな話題となっています。

本コラムでは、公法学が専門の桧垣准教授が、憲法や法律の観点から「年齢」「成年・未成年」について解説していきます。

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このコラムでは、ここまで、子どもの権利を中心に法律と年齢とのかかわりについて考えてきました。最後に、少し違った角度から年齢について考えていきたいと思います。

今まで見てきたように、さまざまな法律で年齢条項があり、年齢に応じて異なる取扱いがされています。例えば、民法では、20歳未満の者を「未成年者」、少年法では20歳未満の者を「少年」、労働基準法では、18歳未満の者を「年少者」としています。

近年問題となってきているのは、年齢に基づいて異なる扱いをするのは、差別に当たらないか、ということです(年齢差別)。例えば過去に、公務員試験の受験資格に年齢制限を設けることが、年齢差別に当たらないかが問題となりました。

憲法は、第14条で「法の下の平等」を定めて、不合理な差別を禁止しています。つまり、異なる取扱いをすることには、正当な理由があるかどうかが問題となります。よって例えば女性だけに産前・産後休暇を認めることは差別にはなりません(男性は子供を産むことができないため)。

では、年齢によって異なる扱いをすることは、正当な区別なのでしょうか、それとも不合理な差別なのでしょうか。この問題はケース・バイ・ケースであり、すべての異なる扱いが差別となるわけではありません。医学的な根拠に基づいた年齢区別は、正当なものだと考えられています(例えば、飲酒、喫煙年齢)。しかし、前に挙げた公務員試験の受験資格の年齢制限や、定年制度など、さまざまな年齢区分が差別に当たらないか問題となっています。

このような年齢区分に、合理性はあるのでしょうか。今回の選挙権年齢の引き下げを機に、年齢について考えてみるのはいかがでしょうか。

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