〔研究者コラム〕ー「法律と年齢(第2回)」選挙権を持つのはどんな人?ー

全4回シリーズでお届けしているコラム「法律と年齢」の第2回です。コラムを担当するのは、桧垣伸次准教授(法学部)です。

2015年6月、選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き上げられることが決まりました。選挙権年齢が引き下げられるのは70年ぶりということもあり、大きな話題となっています。

本コラムでは、公法学が専門の桧垣准教授が、憲法や法律の観点から「年齢」「成年・未成年」について解説していきます。

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前回は、法律上、子どもは特別な制限や保護がなされていることを確認しました。今回は、具体的な問題を考えてみたいと思います。

まずは、選挙権年齢です。日本国憲法は、第15条3項で「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」と規定しています。しかし、「成年者」 とは何歳以上の者なのかについて、実は憲法は何も規定していないのです。そこで、公職選挙法が、選挙権年齢を規定しています。

選挙権年齢は、1945年に25歳から20歳に引き下げられました(この時、同時に女性参政権も認められました)。この時は、「満20歳に達した青年は、 国政参与の能力と責任観念とにおいて欠くるところがない」ため、引き下げが認められるべきだと説明されていました(読売新聞朝刊2015年6月18日第1 面)。つまり、1945年の時点で、20歳以上の者は、十分に発達していると認められていたのです。

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それでは、今回(2015年)選挙年齢が引き下げられましたが、18歳以上の者は十分に判断能力を備えていると考えられているのでしょうか。幾つかの報道では、高校での教育に関して、「教育の政治的中立性」に配慮した指導が求められるとの主張がみられました。

これは、子どもは影響力を受けやすいので、保護が必要であるとの考え方に基づいた主張です。しかし、18歳以上の者が十分な判断能力を備えているのならば、このような配慮は必要ないはずです。自分なりの考えをつくり上げていくためには、いろいろな意見に触れる必要があります。必要以上の配慮は、長期的に見ると未成年者にとって不利益となるかもしれません。もし配慮が必要と考えられるのならば、そもそも選挙権年齢の引き下げはまだ早過ぎるのかもしれません。

18歳選挙権は世界基準だから、という報道もみられました。諸外国がどうなっているのかということも重要かもしれませんが、選挙権年齢を引き下げることの意義、必要性を国民全体で考えることも重要ではないでしょうか。

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