〔研究者コラム〕ー「法律と年齢(第1回)」法律と年齢にはどんな関係があるのか?ー

今回から全4回シリーズで「法律と年齢」と題したコラムをお届けします。コラムを担当するのは、桧垣伸次准教授(法学部)です。

2015年6月、選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き上げられることが決まりました。選挙権年齢が引き下げられるのは70年ぶりということもあり、大きな話題となっています。

本コラムでは、公法学が専門の桧垣准教授が、憲法や法律の観点から「年齢」「成年・未成年」について解説していきます。

00_line-top.gif

■選挙権年齢の引き下げ

選挙権年齢は、公職選挙法という法律で決められています。公職選挙法は、第9条で、「日本国民で年齢満20年以上の者」は選挙権を有すると規定しています。今回は、この条項が改正され、新たに約240万人が新たに有権者となりました。

公職選挙法にみられるように、さまざまな法律で、年齢について規定しています(下図参照)。約2000ある法律のなかで、年齢条項がある法律は212あるといわれています(読売新聞朝刊2015年6月18日第1面)。今回の選挙権年齢引き下げを受けて、他の法律の年齢条項も変更するべきではないかとの議論があります。例えば、民法は、未成年者を「20歳未満の者」と定めていますが、これを「18歳未満の者」にするべきではないか、などが議論になっています。このコラムでは、法律と年齢について、考えてみたいと思います。選挙権年齢の引下げがニュースになっていますので、「未成年者」に着目してみたいと思います。

20150716-1.jpg

■未成年者とは何か

選挙権に限らず、子ども(未成年者)は、さまざまな権利が制限されています(ただし、上図にあるように、法律の年齢区分はさまざまです)。例えば、いわゆる「有害図書」に指定された本やビデオなどを18歳未満の者が購入することを禁止する青少年保護育成条例などがあります。他方で、未成年者を特別に保護する法律もあります。たとえば、刑法は、第41条で、「14歳に満たない者の行為は、罰しない」としています。また、少年法によるさまざまな保護があります。

なぜこのように未成年者は特別な扱いがされるのでしょうか。一般に、未成年者は、「心身の未熟さや発育程度の不均衡から、精神的に未だ十分に安定していない」(最大判昭和60年10月23日)と考えられています。つまり、子どもは発達途上にあるため、傷つきやすく、保護が必要な存在であると考えられているため、さまざまな権利が制限され、また特別に保護がなされています。

しかし、そもそも「子ども」とは何歳未満の者を指すのか、あるいは、特別な制限はどこまで許されるのか、などの疑問が呈されています。次回以降、いくつかの具体的な問題について考えてみたいと思います。
01_line-under.gif