〔研究者コラム〕ー「お酒をめぐる人と自然(第3回)」ワイン:ボルドーワインとワイン商人ー

全5回シリーズで「お酒をめぐる人と自然」に関するコラムを紹介しています。コラムを担当するのは二宮麻里准教授(商学部)です。

二宮准教授のプロフィールや研究情報等はこちらをご覧ください。

00_line-top.gif

ワインは、まさしく人類の歴史と共に世界中で愛されてきた飲み物です。ブドウは、緯度30~50度、年間平均気温10℃~20℃が栽培可能地域です。日本の場合は、北海道のほとんどから鹿児島までなので、本州全域で栽培が可能です。ワインはブドウの栽培可能地域以外へも盛んに輸出され、エジプト歴代のファラオや漢の武帝など、紀元前の権力者たちも好んだと伝わっています。

ヨーロッパでは、イギリスよりも南の全域がブドウ栽培可能地域です。ワインは、ヨーロッパ各地で盛んに生産されるようになり、パンと同様、食卓に必須の食品になりました。日常的に消費される食品であったワインに、「特別な嗜好品」としての地位を与えることに成功したのは20 世紀後半以降のことでした。それは、フランスボルドー地域の商人と生産者、そして政府機関との三位一体の努力によるものでした。

20140622-2.jpg

(写真)ボルドー港からのワイン積み出し風景(ボルドーワイン委員会〔CIVB〕提供)

19世紀後半、ヨーロッパのブドウ産地が、フィロキセラという害虫によって、壊滅的な被害に遭います。ワインが絶対的に不足し、高品質ワインと低品質ワインが混ぜられて販売されたり、水と化学薬品を混ぜ合わせたものがワインとして販売されるなど、ワイン市場は大混乱に陥りました。

そこで、ボルドーの高品質ワインを生産していたシャトー(ワイナリー)は、自らの商標を付けて販売するようになったのです。ボルドーはワイン産地として必ずしも天候に恵まれた地域とはいえません。しかし、生産者とワイン商人は、長期間樽熟成することでワインが高品質なものへと変化することを経験的に分かっていました。ボルドーのワイン商人はシャトーからワインを購入して、樽で長期熟成させ、瓶詰して、高品質ワインとして世界中へ販売したのです。

20140622-1.jpg

(写真)ボルドー、シャトー・ルピュイ(Chateau le Puy)の1610年から続くワイン畑

01_line-under.gif

(参考文献)

  • 酒文化研究所
  • ボルドーワイン委員会 注記)ボルドー市は、福岡市と姉妹都市です。
  • 二宮麻里,Tatiana Bouzdine-Chameeva(2012)「ボルドーワインの生販分業型流通システムと販売問題」『福岡大学商学論叢』第56巻第4号

(関連リンク)