理学部設立50周年を記念し、理学部の取り組みや先生方の研究を紹介します。
今回は、物理科学科の端山和大准教授の研究についてです。
●研究テーマ・内容等についてお教えください。
「重力波による宇宙の観測」です。重力波とは、この世界の空間と時間が、宇宙のどこかで起きている膨大なエネルギー放出によって大きくゆがみ、その様子が波として宇宙全体に伝わる現象のことです。重力波の波形は、宇宙が豆粒ほどのサイズから一気に膨張するインフレーションがいつどのように起こったのか、ビッグバンとは何だったのかといった従来の電磁波望遠鏡では知ることができない生まれたばかりの宇宙の姿や、星の最深部の様子、そして私たちが想像もしなかった現象が克明に記されている、宇宙の巻物のようなものです。
重力波は、高々10のマイナス24乗という、桁外れに小さい波で地球にやってきます。私はその桁違いに小さな重力波の波形を丹念に調べ、桁違いに大きな宇宙を読み解くことを研究しています。
●研究を始めたきっかけは?
小学生の頃、近くの山川で魚や昆虫を捕まえてはその名前を調べたり、飼育して生態を観察したりするのが大好きでした。その後、興味の対象が宇宙まで広がっていき、特に“宇宙がどういう形をしているのか”“どういう法則で成り立っているのか”を知りたいと思うようになりました。大学では天文学科に進み、宇宙を観測するさまざまな方法を学びました。
大学2年次生の時、『時空の本質』(スティーブン・ホーキング、ロジャー・ペンローズ著)を読み、強く感銘を受け、実証的に時空の構造を明らかにしたいという気持ちを強くしました。また、大学3年次生で、重力波観測用望遠鏡TAMA300の開発を中心になって進めていた国立天文台の藤本眞克先生の研究室を訪ねました。そこから、「重力波を用いて直接時空の変動を観測すると、その構造を明らかにできるのではないか」と考え、重力波を研究テーマに設定しました。そのためにはまず、重力波を検出する望遠鏡を作り、観測された宇宙からの信号を解析しなければなりません。当時そうしたものは何も存在していなかったので、望遠鏡開発・観測データの解析手法開発・重力波の検出、そして重力波から時空の構造の解釈等、全てのプロセスを我々自身で切り拓いていくような研究でした。
●この研究は、私たちの暮らしにどう影響しますか?
2016年に重力波が初観測され、人が10のマイナス24乗のゆがみを見ることができるようになりました。そうすると、いろいろな考えが浮かんできます。例えば、私たちよりもはるかに進んだ文明を持つ宇宙人が存在しているとします。その宇宙人が消費する膨大なエネルギーによって生み出される重力波が検出できると、その超高文明宇宙人の居場所を明らかにできるでしょう。また、重力は私たちの宇宙から、隣の宇宙に伝わる可能性があります。そうすると重力波を用いて、宇宙間通信ができるかもしれません。そう夢を膨らませていくと、重力波が宇宙人同士の交流や、宇宙間の通信の要になってくるのではないかと思えてきます。
●先生がご専門にされている研究の魅力、面白さをお教えください。
私の興味は、時空の構造を観測的に明らかにすることで、重力波の観測研究はまさにぴったりと感じています。この研究は「一歩踏み出せば、そこは何人も知らない世界につながっていること」「好奇心のままにさまざまなものを調べると、それが不思議と研究に役に立っていること」が多いと感じており、周りに大きく広がっている未知のものと研究の自由さに魅力を感じています。

レーザー干渉計型重力波望遠鏡KAGRA(宇宙線研提供)

地上と宇宙の重力波望遠鏡で宇宙の進化を読み解く
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