理学部設立50周年を記念し、全7回に分けて理学部の取り組みや先生方の研究を紹介します。
本記事からは、理学部の各学科から推薦された4人の先生方の専門分野を掲載します。
今回は、応用数学科の田中 勝教授の研究内容です。
●研究テーマ・内容等についてお教えください。
現在は主に、「情報幾何」の分野を研究しています。情報幾何とは、情報処理を幾何的に(図で)理解することです。
この研究では、確率分布を決定しているパラメータの空間を考えます。このパラメータの空間は曲がっており、そのままだと扱いが面倒なので、2つの確率分布がどれくらい似ているかに応じてピタゴラスの定理を使い「平らな」空間へ移します。これにより、さまざまな統計の問題やAIの中核技術である機械学習の問題などを解決することを目指しています。
●研究を始めたきっかけは?
私が大学院生だった1988年頃は第2次神経回路網ブームの時で、情報幾何学の創始者とされる甘利俊一さんの『神経回路網の数理』(1978年,産業図書)を手に取りました。この本が面白かったので他にも探すと『Differential Geometrical Methods in Statistics』(1985年,Springer)という本に辿り着きました。この本との出合いが情報幾何を研究するきっかけでした。
●この研究は、私たちの暮らしにどう影響しますか?
情報幾何学は、情報通信や人工知能なども含む機械学習など多くの分野で、問題を整理し分かりやすくするための道具として、また問題を解決するための道具として幅広く利用されています。例えば、スマートフォンの通信方式で使われるターボ符号のアルゴリズムは複雑ですが、情報幾何を用いると図として理解することができ、技術進歩につながります。また、量子コンピュータ等への応用も期待できます。そして、AIでは「学習」による性能向上がポイントですが、この「学習」についても情報幾何は多くの影響を与えます。
●先生がご専門にされている研究の魅力、面白さをお教えください。
情報幾何を使うことで、統計や機械学習の問題を幾何学的に理解し解決することが面白いです。また、情報幾何は基礎研究でありながら、数学、物理学、生物学、脳科学、経済学などへ応用可能なところに魅力を感じます。

研究を始めたきっかけとなる思い出の2冊
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