4年ぶり5回目のセンバツ大会出場を決めた大濠高校硬式野球部。昨年のプロ野球ドラフト会議では、山下舜平大投手がオリックス・バファローズから1位指名を受けるなど、躍進を続けています。

そんな硬式野球部躍進のカギは、「育てる」指導。5年前に大濠高校硬式野球部のコーチに就任した藤山晶広コーチへの取材から、硬式野球部の強さの秘訣に迫りました。
 

取材を受ける藤山コーチ

九州大会でのシートノックの様子

Q.ドラフト1位選手の輩出、センバツ大会出場と、硬式野球部の躍進が続いています。選手を指導するうえで、心掛けていることや方針などはありますか？

選手を「育てる」という感覚を持って指導しています。「鍛える」や「きつい練習を与える」とは真逆の考え方です。

練習を強制させたとしても、選手自身がその練習の意味を理解していない限り、野球は上手くなりません。練習は、何かを達成するため、上手くなるために必要なステップだということを認識してもらうように常に意識しています。

Q.「育てる」指導が必要だと考えるようになったきっかけなどはありますか？

私自身、大濠高校に赴任したのは約5年前になります。それまでは、高知県の明徳義塾高校で教員をしながら、野球部の指導にあたっていました。全国屈指の強豪校ですから、いい選手もたくさんいますし、練習時間も十分に確保できました。在籍した9年間で、10度甲子園に行きました。

前任校では、高校卒業後も大学やプロで活躍するような選手を多く輩出しましたが、中には大学に入ってすぐに野球を辞めてしまうような子もいました。いま考えると、本当の野球の面白さや楽しさを十分に教えてやれなかったことも一つの原因だと思っています。

そんな反省から、大濠の硬式野球部に入った子には、入学前よりも野球を好きになって卒業してもらえるように、野球の面白さを知ってもらえるようにしようと心掛けています。そうするためには、強制的な指導ではなく、考えて野球ができるようになるための指導が必要だと考えました。選手を「導いてあげる」ことが特に大切だと思っています。

九州大会の試合前、川上選手とコミュニケーションを取る

Q.具体的にはどのような指導になるのでしょうか？

前任校と違い、学校から野球場まで距離がありますし、生徒たちは午後までしっかり授業を受けます。練習時間でいえば、半分程度しか取れない状況です。

本来なら自分たちで考えさせて、練習メニューを構成させるのが良いかもしれませんが、それだけの時間は確保できません。そのため、私たちは答えやアドバイスを最初に示し、そこから選手たちに考えて練習に取り組むように伝えています。答えを示しつつも、なぜその答えにたどり着くのか、選手自身で「考える・工夫する」ステップは必ず設けるように意識しています。

試合が近ければ、相手を分析したうえで、このようにしたら勝てる、だからこの練習をする、といった感じですね。試合に入る前にはすべての準備を終わらせて、あとは練習通りに戦うだけ、という状態に持っていっています。

Q.その他に、指導するうえで心掛けていることはありますか？

選手とこまめにコミュニケーションを取るようにしています。高校から野球場までのバスの車内での会話は、とても貴重な時間ですね。野球から離れた時の会話こそ貴重なのです。

私は、過去の教え子がどのように過ごしていたか、野球以外の時間はどう過ごしたらいいか、などを雑談の中で話すようにしています。こうしたコミュニケーションも、選手が育つ理由につながっているのかもしれません。

Q.最後に、センバツ大会を戦う今年のチームの特徴と目標を教えてください。

今年のチームは、試合への対応力があるのが特徴です。試合状況に応じて、柔軟に動くことができる印象です。打撃面に課題があるものの、今年のチームは守り勝つ野球で戦ってきましたので、その強みも強化したいと考えています。

まずは初戦を突破し、前回出場時を超えるベスト4を目指したいと思います。

大濠高校に赴任して5年目を迎えた

藤山 晶広 コーチ

プロフィール
名前：藤山 晶広（ふじやま・あきひろ）
経歴：1983年生まれ。大学卒業後、高知県の明徳義塾高校野球部で9年間指導し、10度の甲子園出場を果たす。2016年に大濠高校に赴任し、現在は硬式野球部のコーチとして選手を指導している。