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2021617
研究

コロナウイルスを不活性化する「クリーンエアシャワー」の共同開発者に聞く(第2回)

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マリンメッセ福岡で実施されている新型コロナウイルスの集団ワクチン接種では、入り口付近にゲート型の「クリーンエアシャワー」が設置されています。

この装置は、接種希望者がゲートをくぐると、8つのノズルから洋服などに風が吹きつけられ、飛んだウイルスをフィルターでとらえて紫外線を照射し、ウイルスを不活性化するもので、コロナ対策の1つとして活用されています。㈱エッチ・ピー・エス(新宮町)が開発に乗り出し、福岡大学工学部化学システム工学科の三島健司教授の研究室が開発に携わりました。

今回は、本共同開発に携わった三島教授と大学院生の徳永真一さんに話を聞きました。第2回は、徳永真一さんです。


(左から)三島教授と徳永さん


福岡大学大学院 工学研究科 情報・制御システム工学専攻 博士課程後期3年次生
徳永 真一 さん

・徳永さんが大学院に進学されたきっかけは?

福岡大学工学部化学システム工学科で4年間学ぶ中で、化学工学が化学、医療、医薬、化粧品、食品...など非常に幅広い分野の企業から需要がある、素晴らしい学問だと分かりました。しかし、就職活動で企業が求める研究者像を調べたところ、化学工学の専門家として研究開発に携わるためには学部の知識では不十分だと知りました。化学工学者として企業で活躍したいと思っていましたので、大学院への進学を決めました。

・現在の研究分野・テーマを教えてください。

「二酸化炭素を回収・有効活用した高機能微粒子の製造プロセス開発」というテーマで研究しています。地球温暖化の原因物質の一つとして考えられている二酸化炭素を回収・有効活用した、微粒子製造プロセスの開発を行っています。

薬剤に耐熱性や徐放性を付与する高機能微粒子の開発にはすでに成功し、この技術は多くの特許出願・論文執筆に貢献し、幅広い企業から注目を集めています。

・徳永さんが共同開発に携わった理由を教えてください。

本共同開発を三島教授に紹介いただいた際、医療関係の装置開発なども手掛けるエッチ・ピー・エス社の考え方やノウハウに触れることができること、また、この共同開発を通して地元の福岡に地域貢献ができることを考え、参加することに決めました。

私は、製造段階でのヒーターや紫外線ランプの取り付け位置の検討に携わりました。ヒーターは、取り付け位置が不適切だと効率的な熱滞留が起こらず加温が難しくなります。また紫外線ランプは、使用者の目に直接紫外線が入らないように考慮しなければなりませんでした。

・共同開発で大変だったこと、苦労したことは何でしたか?

安全と低コストを両立することはもちろん、期日に間に合うように迅速に課題に取り組むことが大変でした。研究室では、論文の投稿ができるように自分のペースで研究を行えばいいのですが、企業との共同開発では、期日までに実用化する必要があり、ハイペースで研究を進める必要があります。

また、今回の共同開発では、専門とする熱移動や物理化学に関する知識のほか、医学などの生物学的な知識も必要でした。製品の実用化には、企業が求めるさまざまな分野の知見がないと難しいことを実感しました。

・最後に、今後の研究の目標を聞かせてください。

来年4月から、総合化学メーカーの技術職として働く予定です。まずは博士論文執筆のために研究を続けていく予定ですが、今後企業が重視する分野の研究にも携わりたいです。

近年、多くのメーカーが、プラント設計を行う予備検討として、コンピュータを活用したシミュレーション技術に着目しています。また、医療分野における技術開発も拡大しています。学生という自由に勉学できる期間を最大限生かし、化学工学の専門家として必要になるスキルを身に付けていきたいと考えています。


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