福岡大学は9学部31学科を擁する、西日本屈指の総合大学であり、さまざまな分野の研究が行われています。
今回、本学人文学部文化学科の3人の教員が、「新型コロナウイルス感染症」や「パンデミック」等について美術史の観点からコラムを執筆しました。
Covid-19の世界的流行は現在も続いており、まだ収束の気配は見えません。
1348年の「黒死病(ペスト)」の世界的大流行は高校の世界史でも触れられていますが、西欧でペストの流行はその後も繰り返し起こり、それに取材した絵も少なくありません。
最も有名な作品の一つが、17世紀のフランス画家ニコラ・プッサンが描いた《アシドドのペスト:ペストに襲われるペリシテ人》(1631年 148×198㎝ ルーヴル美術館蔵)です。
- ルーヴル美術館のウェブサイトは、こちら
この絵は旧約聖書サムエル記に記述される、ペリシテ人が神の怒りを買い、アシドドの町が疫病に襲われた、という物語に基づくものです。古代風の市街を舞台として、倒れている母親とすがって泣く乳飲み子、感染を恐れて鼻を押さえる人々など、印象深い表現があります。さらに興味深いのはネズミが登場することです。左手のコリント式円柱の基盤や、右手奥階段の下に見られます。17世紀初頭の段階で、ペストとネズミの関係は知られていたのでしょう。
ペスト同様、コロナも予防措置によって防げます。コロナ禍についてまだ気を緩めてはいけません。三密を避けて安全に暮らすよう心掛けましょう。美術史の教員として、再び美術館で心おきなく美術作品を楽しみ、おいしいケーキを食べながら談笑できる日が早く来ることを心から願っています。