川柳とは?

 川柳は、一言で説明すると「五七五音のリズムで人情を詠み、人や社会を風刺する口語の詩である」といえます。
 五七五の十七音の詩は、俳句とともに世界で一番短い詩形です。川柳の表現は、俳句のような文語体ではなく、現在、私たちがふつうに話したり書いたりしている口語体です。また、川柳の表現は 俳句に比べると自由であり、俳句のように切れ字や季語を使用するという約束事はありません。

代表的な感情表現である喜怒哀楽の周辺にある人間模様

一、 喜怒哀楽を詠む

 川柳が、五七五音で人情・人生・人の世を詠む詩であるというとき、その範囲は無限の広がりを持っています。
 試みに『分類語彙表』(国立国語研究所編)から代表的な感情表現である喜怒哀楽に当たる言葉のいくつかを拾ってみます。

  •  喜びの「喜」・・・気持ちよさ、おかしみ、気晴らし、大喜び、歓喜、など。
  •  憤りの「怒」・・・恐ろしさ、腹立ち、八当たり、激怒、歯ぎしり、など。
  •  悲しみの「哀」・・哀れ、寂しさ、もの思い、悲嘆、傷心、断腸、など。
  •  楽しさの「楽」・・楽しみ、快楽、のんき、手軽、事もなく、大丈夫、など。

 さらにそれぞれの語の周辺には、強さと弱さ、賢さと愚かさ、生真面目さとずるさ、美しさと醜さ、楽しさと悲しさ、完全と不完全、善と悪、明と暗、甘さと辛さ、といった方向や程度の異なる人間の百様百態を見ることができます。

 川柳は、こうした人間のさまざまを素材とする詩です。また、川柳は、人間の多様性を描く文字文化も豊富に享受しています。
 漢字・かな・外来語・縦書き・横書きの表現ができ、その伝達も、五七五音の短さとリズムを長所として、音声から携帯電話、インターネットまで移りゆく文明に対応しています。まさにこれからの世紀にふさわしい文芸であるといえます。

「穿(うが)ち」「おかしみ」「軽み」

二、 川柳の三要素

 「穿(うが)ち」「おかしみ」「軽み」を、一般に川柳の三要素と称します。
 古川柳と呼ばれる、おびただしい数の作品から、川柳味の源をなす要素を、後の世になって抽出した結果、この三大要素が絞り出されたものです。

  •  「穿(うが)ち」・・・深く掘って物事の本質を取り出して提示し、読者をハッとさせること。
  •  「おかしみ」・・・・・ユーモア、滑稽味。
  •  「軽み」・・・・・・・軽妙洒脱、爽快でキレのよいこと。

 この三つの要素は、現代川柳においても確かに重要な屋台骨ですが、これで全てということではありません。
 世界の体制や文芸の思潮に応じて、「抒情」「真実み」「詩性」「重み」といった要素も重視されています。

主に、俳句は自然を詠み、川柳は人を詠う

三、 俳句との相違点

  •  俳句には季語が不可欠(例外もある)ですが、川柳では季語にこだわりません。
  •  俳句は文語体、川柳は口語体という違いがあります。
  •  俳句が「や」「けり」などの切れ字を用いるのに対して、川柳では原則として切れ字を使いません。

 俳句のテーマが、自然の動植物や地球、宇宙が中心であるのに対し、川柳のテーマは、あくまで人間が中心であり、人情、人間の暮らし、人生、人の世の出来事を詠みます。俳句も人間を詠むことがありますが、それは自然との関わりを詠んでいます。
 これに対して、川柳は人そのものをあらゆる角度から観察して詠みます。自分の心の中をも詠む。自然は嘘をつかないが、人間には本音と建前があったり、ときには嘘もつく。俳句は自然の美をありのままに詠みますが、川柳は人間の実体的真実を追求し、外見から見えない心の内側も詠みます。川柳は、人間を描写する文芸であると言えます。

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