応募総数:全国128校の高校生6,369人から14,879作品。
大賞〔福岡大学長賞〕1作品、優秀賞2作品、入賞50作品を選出しました。
高校生になって初めての夏休み。部活動も連日ハードなものです。練習帰りは心身ともにズタボロ、喉も砂漠になっています。しかし、一瞬でその疲れを消し去ってくれるのがサイダー。サイダーの「シュワッ」で、たちまち疲れも吹き飛びます。受賞ということを聞いて、驚きとうれしさで胸がいっぱいです。このような機会を与えてくださったこと、また私の句を選んでいただいたことに感謝します。
あのまるで栓をはね飛ばすかのようにシュパッと弾けるサイダーの泡。喉から食道そして胃が一直線でつながっていることを実感する一瞬。それが「若さ」ともいえる。部活で悲鳴を上げていた心身がこの清涼飲料水を一気に吸収し、疲れを忘れさせる。この若さが吸収するのはそれだけではない。学問はもちろん友情、移ろう季節、そしてほろ苦い挫折も。若い季節は吸い取り紙の季節でもある。
まず受賞のことを聞いた時は大変驚きました。まさか自分が受賞するとは・・・今でも信じられませんが、本当にうれしく思います。この川柳で描いたのは、年に一度着るか着ないかの浴衣を着て、さらに慣れない下駄(げた)で自分が歩きたい人と一緒に歩いているシーンです。何気ないこのシーンの中には、長い時間歩いて鼻緒は痛いけれども、その分一緒に過ごせているといううれしさが詰まっています。今度の夏もまた慣れない下駄を履いて、幸せな時間を過ごせたらいいな、と思います。
遠くで花火の音がする。振り向きもしないでずんずん歩いていく友だちの背中を見失うまいと追いかける鼻緒。買ったばかりの少し固めの鼻緒が素足にちょっぴり痛い。今いちばん大切な人と、同じところで同じ景色をみながら同じ時間を共有する喜びに比べればこの痛さもなんの。下駄の音がカラコロと軽く響く。
自分の作品がこのような栄えある賞に選出され、大変驚いています。この作品は、自分の体験をもとに作りました。審査員の方々が、作品のそこはかとなく漂う哀愁に共感してくださったことをとてもうれしく思います。これからも、試験や受験勉強、仕事など、徹夜をすることは何度もあると思いますが、バイクのエンジン音が聞こえ、白んだ空を見上げた時、どこかで同じように徹夜した人がいると思うことが、私の励みになると思います。
夕方の「たそがれ」に対し明け方を「かわたれ」という。そのかわたれ時の街に「おはよう」のバイク音。新聞それとも牛乳の配達か。朝早くから働く人のバイクの音が徹夜の終わりと一日の始まりを告げる。もう眠る時間はないが少しだけでも横になろう。今日のこの徹夜が一体どれほどの収穫をもたらしたのだろうか、それは分からない。何となく親近感を覚える今朝のバイクの音。
作品 | 氏名 | 高校名 | 学 年 |
高校 所在地 |
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雪の下 努力をすれば 花が咲く | 天間 琴音 | 県立七戸高等学校 | 3 | 青森県 |
“自分らしく” 勇気をくれた 母の声 | 齋藤 彩可 | 県立今市高等学校 | 3 | 栃木県 |
初メイク 見た目はまるで 罰ゲーム | 今井 宥里 | 東京学芸大学附属 国際中等教育学校 |
1 | 東京都 |
テストより サッカー見続け 失点す | 坂巻 勝利 | 都立調布南高等学校 | 3 | 東京都 |
おこずかい 僕の母さん 仕分け人 | 川崎 健 | 早稲田大学高等学院 | 3 | 東京都 |
愛犬と 赤ちゃん言葉で はなす父 | 小俣 亜衣実 | 県立上野原高等学校 | 3 | 山梨県 |
いつの間にか 母と私が 同じ声 | 北村 優佳 | 県立岐阜農林高等学校 | 1 | 岐阜県 |
今気づく 離れて分かる 親の愛 | 村上 まこ | 藍野学院短期大学附属 藍野高等学校 |
1 | 大阪府 |
花火見て ぬすみ見るのは 彼の顔 | 奈佐 みちる | 藍野学院短期大学附属 藍野高等学校 |
2 | 大阪府 |
忘れぬよう メモ書き残し メモ探す | 安保 絵梨奈 | 藍野学院短期大学附属 藍野高等学校 |
3 | 大阪府 |
汗だくの 父の背中に 「お疲れ様」 | 菊池 麻由 | 神戸市立葺合高等学校 | 2 | 兵庫県 |
少しだけ 内緒で座る 貴方の机 | 草名木 美帆 | 神戸市立葺合高等学校 | 2 | 兵庫県 |
「またあした!」 小さな約束 永遠に | 本田 真澄 | 神戸市立葺合高等学校 | 2 | 兵庫県 |
夏休み 潮の香りの 日記帳 | 大塚 明 | 県立倉吉農業高等学校 | 3 | 鳥取県 |
ケータイの 着信履歴 母ばかり | 平子 健太 | 県立総社高等学校 | 1 | 岡山県 |
汗涙、 流した数だけ 名場面 | 白井 達也 | 山口県桜ケ丘高等学校 | 1 | 山口県 |
上げるなら 心の偏差値 ベルトの位置 | 有浦 秀昭 | 九州国際大学付属高等学校 | 2 | 福岡県 |
あげなくちゃ 偏差値以上に 人間性 | 福原 真 | 九州国際大学付属高等学校 | 2 | 福岡県 |
この国の 法律よりも 母の法 | 上野 晃平 | 福岡大学附属大濠高等学校 | 1 | 福岡県 |
日常を 変えたいのなら 自分から | 金子 誠 | 福岡大学附属大濠高等学校 | 1 | 福岡県 |
ひまわりが 上をめざせと 叫んでる | 木戸 志織 | 福岡大学附属若葉高等学校 | 1 | 福岡県 |
さあ食べて! 祖父母の愛で また太る | 當山 莉世 | 福岡大学附属若葉高等学校 | 1 | 福岡県 |
消費税 上げれば支持率 降下する | 松永 みのり | 福岡大学附属若葉高等学校 | 1 | 福岡県 |
私より オシャレな服着る マイペット | 池上 遥大 | 県立佐賀北高等学校 | 1 | 佐賀県 |
龍馬伝 観た姉最近 土佐弁に | 源五郎丸 莉帆 | 県立佐賀北高等学校 | 1 | 佐賀県 |
暑すぎて スカートあげて おこられる | 尾上 茅奈 | 純心女子高等学校 | 1 | 長崎県 |
文房具 消費するたび 満足感 | 本田 遥 | 純心女子高等学校 | 1 | 長崎県 |
笑うこと それが“いちばん” 親孝行 | 松本 智華 | 純心女子高等学校 | 1 | 長崎県 |
はやぶさに 思いが詰まった みなの夢 | 井上 真也 | 県立諫早農業高等学校 | 3 | 長崎県 |
父の背を こしておやじと よんだ春 | 松尾 将史 | 県立諫早農業高等学校 | 3 | 長崎県 |
夏空と 心の青さ 競い合う | 林 優佳 | 県立長崎工業高等学校 | 1 | 長崎県 |
将来が 見えない日本で 就活中 | 石橋 夕未 | 県立長崎工業高等学校 | 3 | 長崎県 |
飼い犬に 毎日散歩を させられる | 緒方 悠太 | 県立長崎工業高等学校 | 3 | 長崎県 |
会う度に 「大きくなった」と おばあちゃん | 北村 麻衣 | 県立長崎工業高等学校 | 3 | 長崎県 |
祭りの後 静まりかえる 街と父 | 坪井 紘太郎 | 県立長崎工業高等学校 | 3 | 長崎県 |
職員室 クーラーあるのに 汗がでる | 吉永 哲也 | 県立松浦東高等学校 | 3 | 長崎県 |
親のすね かじって目指す 自立の日 | 田原 翔 | 県立球磨工業高等学校 | 3 | 熊本県 |
エコバック 気付けば大量 ムダバック | 井上 仁美 | 県立安心院高等学校 | 3 | 大分県 |
学校の 机の上に 歴史みる | 後藤 優汰 | 県立情報科学高等学校 | 1 | 大分県 |
桃とかけ 好きな子ととく きになります | 池田 佑主斗 | 県立情報科学高等学校 | 2 | 大分県 |
試合の日 かげから見える 母の顔 | 大久保 宇理 | 県立情報科学高等学校 | 2 | 大分県 |
母さんよ 先に寝てくれ 俺も寝る | 後藤 優太郎 | 県立情報科学高等学校 | 2 | 大分県 |
傷ついて 初めて学ぶ その痛み | 左甲斐 隆静 | 県立情報科学高等学校 | 2 | 大分県 |
人類は 親を越えると 進化する | 伊藤 栄規 | 延岡学園尚学館高等部 | 3 | 宮崎県 |
一年間 テレビ録(と)りだめ 受験生 | 小畑 祐衣 | 延岡学園尚学館高等部 | 3 | 宮崎県 |
赤点だー 言ってた奴ほど 高得点 | 前田 有希 | 延岡学園尚学館高等部 | 3 | 宮崎県 |
テレビ見て 同時に笑う 父とオレ | 田川 裕城 | 日章学園高等学校 | 3 | 宮崎県 |
5円引き 誘われ持ってく エコバッグ | 西牟田 駿 | 樟南高等学校 | 1 | 鹿児島県 |
散歩して 母より犬が やせてきた | 東 美順 | 樟南高等学校 | 2 | 鹿児島県 |
背をこすも 母の苦労は まだこせず | 宮里 伊織 | 県立久米島高等学校 | 1 | 沖縄県 |
※ 敬称略
『雪の下努力をすれば花が咲く』 限りなき一面の雪。音もない、動くものも一切。しかしその雪の下には春を待つ確かなものが動いている。「春」は木の芽や花の蕾などが「張る」の意だともいう。あらゆるものがもくもくとやがての春の準備をしているのだ。 『汗だくの父の背中にお疲れ様』 口に出しては言えない父への感謝のことば。父もまた汗だくの背を、子や家族のためなどと言ったことはない。それぞれが黙って思いやる、家族とはそういうものなのだ。 『ひまわりが上をめざせと叫んでる』 「ひまわり」は漢字で「向日葵、日回り」。まるで太陽に挑むかのようにぐんぐん伸びる。今朝のその背丈はゆうに私を追い越した。「さあいっしょに太陽に向かって歩きましょう」とでも言うように。 『父の背をこしておやじとよんだ春』 お父さんという呼称がいつしか「おやじ」となった。「お父さん」の頃の父は大きな山であり岩であった。歳月はその山を越えさせようとしている。見上げた山が心なしか小さくなった気がする嬉しさ半分、寂しさ半分の春だ。 『試合の日かげから見える母の顔』 どんなに遠くにいても、そして人ごみの中でも母の存在が際立つのはどうしてだろう。試合当日スタンドの片隅から応援してくれる母。朝早くからいつものように、そして当然のように弁当を作ってくれた母。 川柳が生まれて250年。俳句と同じ5・7・5の短詩である。俳句が季節を対象とするなら川柳は人間社会を対象として詠う。川柳に向かうそのひとときの短い時間、家族を含めた人間社会に対し心優しい自分がいることを発見するだけでも大きな収穫である。 (梅崎流青)
- ●広報委員会構成員
- 学長、副学長(4人)、事務局長、経済学部長、スポーツ科学部長、教務部長、
学生部長、総合情報処理センター長、入学センター長、就職・進路支援センター長、
企画部長、学長が委嘱した者(工学部教授) - ●学長が指名する者
- 田代俊一郎氏(西日本新聞社編集企画委員会客員編集委員)
- 梅崎流青氏(西日本文化サークル佐賀教室事務局長)
- 田坂順子(福岡大学人文学部日本語日本文学科教授)