FUKUDAism(フクダイズム)

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2021123
教育
研究

工学部の田中綾子教授が、令和3年度環境大臣賞を受賞

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福岡大学工学部資源循環・環境グループの田中綾子教授は、廃棄物埋立地と微生物・有害化学物質との関係などを研究しています。今般、長年の研究や学会・社会活動の功績が認められ、「令和3年度廃棄物・浄化槽研究開発功労者」として環境大臣賞を受賞しました。

田中教授は、「古くからある技術をその場で安価に入手できる材料や人材を活用してその国の発展に貢献することが持続可能な開発目標=SDGsにつながるのではないか」と話します。研究内容や今後の目標などについて話を聞きました。


−研究内容や授業について教えてください

私は、廃棄物埋立地における環境モニタリングと環境汚染リスク低減に関する研究などを主に行っています。現在日本は廃棄物を焼却し、その後に残る灰などを主に埋立処分しています。灰はアルカリ性が強く、微生物にとっては住みにくいところです。廃棄物の埋立地では、このような灰が処分された層の上に土が被せられます。これを覆土と呼びます。その覆土の一部に微生物と微生物の栄養源が含まれている堆肥を混ぜることによって、灰中に微生物が住むことができるようになり、その微生物の活動により灰が中和され、灰中の有害物質の無害化および安定化が促進されることを目指しています。私はこれを生態学的安定化と呼んでいます。コロナの流行によって、「環境に生息する生物すべてが健全であることが地球環境の健全性にとって重要である」というワンヘルスの理念が国際的に提唱されていますが、廃棄物埋立地においても廃棄物の後始末をしている微生物が健全であること、つまり、生態学的安定化がリスク低減にとって重要と考え、廃棄物埋立地を微生物の生息にとって良い環境に改善する研究をしています。

授業では環境工学や土壌生態学などについての講義と実験を行っています。学生に池と地下水はどちらの方が汚れた水であるかと質問すると「なんとなく・・・だと思う」と答えます。実際に水質や細菌の数を調べることで、その「なんとなく」が確証に変わり、その処理を今後どう行えばいいのかなど考えることができるようになります。下水処理についても実際に現場に足を運んで講義をしています。

−研究を始めたきっかけは?

私は、本学薬学部出身ですので、薬剤師になる予定でした。しかし、もともと研究をすることが好きだったこと、男女や上下関係にとらわれず問題に立ち向かう性格であったことから、研究という道に進みました。

今後の研究の目標について

海外業務を充実させることです。「福岡方式」と呼ばれる、本学と福岡市が共同開発したごみ埋立技術は、国連ハビタットや日本国際協力機構(JICA)によって海外への普及活動が続けられていて、コロナ前は私も海外業務に従事していました。海外業務に大学院生を連れていき、現場での作業や現地技術者との協議への参加を通じて、海外で仕事をする際のノウハウも教えています。また、現地の文化についても紹介し、日本という豊かで環境の良い国について考えるきっかけもつくっています。海外業務でいろいろな国へ行き、その地の環境や人、食べ物に出会うことは近年、私の唯一の楽しみになっています。これまでもルワンダ、エチオピア、ソマリア、ミャンマー、アフリカなどの国で「福岡方式」を普及させていますが、現地人がやり方を身に付け、見る見るうちに環境が改善されていくのを目の当たりにすると、今後もっと世界(特に途上国)へと普及させる必要があると感じます。私自身もたくさんのことを吸収して廃棄物埋立地のリスク低減技術などの研究に役立たせたいと思っています。

  • 工学部のウェブサイトはこちら
  • 資源循環・環境工学専攻【修士課程】のウェブサイトはこちら
  • 国連ハビタット:ミャンマー埋立地改善事業に関する動画はこちら

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政府が海外配信 : 太平洋の島々をごみから守る「福岡方式」