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2026年10月6日
医療
地域連携

福岡大学病院「外傷蘇生センター」始動 【第2回】ー 1人の命を救うために、チームはどう動くのか ー

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外傷蘇生センターに係る記事(全3回)の第2回です。


搬送される重症外傷の患者。そこで問われるのは、救急医師一人の判断だけではありません。外科医師、看護師、臨床検査技師、事務部門まで、それぞれの専門職が、必要なタイミングで動かなければなりません。

外傷蘇生センターでは、外傷コール後5分以内にチームとしてスタッフが参集し、対応できる体制を構築しています。同時にそれは、緊急手術や輸血への即応も、複数の部門が同時に動くことが前提。では、どうすれば「同時に動く」ことが可能になるのでしょうか。

仲村佳彦センター長(外傷蘇生センター)が準備の中で重視してきたのが、共通の「言語」と「治療戦略」でした。救急医師だけが分かっていても、外科医師や看護師、メディカルスタッフに同じ認識がなければ、チームとして動くことはできません。そのため病院では、現在も多くの医療従事者が外傷コースを受講し学んでいるほか、これまでに多職種が参加するシミュレーションも行ってきました。言葉で「こう動きます」と説明するだけでなく、実際に動く。どの部署がどう関わり、どこで次の動きにつなげるのか。多くのシミュレーションを通して、そのイメージを共有します。

同センターのキーマンの一人、藤田晃浩副センター長(外傷蘇生センター)は、大学卒業後に東京や海外で高度な外傷診療を経験してきました。そこで「助かる」患者を目の当たりにした一方、福岡に戻ってからは、助けられたはずの患者が助からなかった経験もあったと言います。

その経験を踏まえ藤田副センター長は、「やはり共通の認識や言語といったものが大切」と強調します。その上で、重症外傷の患者を救った「成功体験」を、医療関係者が一体として見ていくことが重要と分析します。言うまでもなく、「連携」という名の横同士の診療体制づくりは初めから完成しません。一つずつできることを増やしてきました。その過程で、救急医師だけでなく、さまざまな職種が協力してくれたと藤田副センター長は付け加えます。

「この病院(福岡大学病院)ならもっと良い外傷診療体制が構築できるんじゃないか」。

藤田副センター長が感じているのは、福岡大学病院にある「人の力」とその「チーム」が患者を治療する瞬間だけの存在ではないという点です。例えば、突然の受傷に直面した家族は、短い時間の中で病状を理解し、治療について判断を求められる場面がある。その際、看護師は診療を支えるだけでなく、動揺する家族の気持ちをくみ取りながら、その意思決定を支えます。

仲村外傷蘇生センター長

藤田外傷蘇生副センター長

上野那央師長(救命治療センター)は、突然の受傷によって大きく動揺する家族に対して、患者の状態を理解してもらい、短い時間の中で治療について判断できるよう支えることも、看護師の大切な役割だと話します。

医師から説明を受けても、家族にとってはすぐに理解し、決断できるとは限りません。患者本人の状態だけでなく、家族の気持ちにも目を向けながら、その場で必要な意思決定を支えていく。そこには、救急看護ならではの難しさがあります。

上野師長は、看護師自身もジレンマを抱えながら、一つ一つの症例について「こんな症例だった」と皆で振り返っていると話します。目の前の患者を支えるだけでなく、その経験を次の看護へつなげていくことも、救急看護の重要な役割です。一方、重症患者の治療は初期診療だけにとどまりません。

竹下恵美師長(救命救急センター)は、初期診療を終えた重症患者が、その後、集中治療の場へ移っていくことを踏まえ、「初期診療の理解も必要だし、その後の管理についての知識も必要」と話します。

初期診療と、その後の集中治療。それぞれの部署で役割は異なります。それでも、一人の患者の治療はそこで途切れるわけではありません。だからこそ、竹下師長は、外傷蘇生センターの立ち上げを機に、救急のスタッフと集中治療のスタッフが「同じような教育を一緒に受けながら、同じ認識を持つ」ことを重視しています。医師同士だけでなく、看護師も「共通理解できるところを意識しながら」教育していくという視点です。

看護においては、初期診療に特化した教育プログラムの整備も進められています。上野師長は、これまで初期診療に特化した十分な教育プログラムが無かったことにも触れ、現在、そのプログラムを策定していると話します。

上野救命治療センター師長

竹下救命救急センター師長

というのも初期診療の現場では、その後の継続看護が見えにくいことがあります。だからこそ、そこで得た経験を患者の命にしっかり還元しながら、救急看護にやりがいを感じ、看護師自身が成長できる環境をつくっていく。そのために教育プログラムに加え、医師とシミュレーションを行うことも計画されています。

重症外傷の現場では、一人の専門家が全てを背負うわけではありません。救急医師が判断し、外科医師が治療につなげ、看護師が患者と家族を支え、メディカルスタッフや事務部門も連動する。それぞれの専門性を同じ時間軸の中で機能させていく。そのための「共通言語」をつくり、実際に動いて確かめる。

外傷蘇生センターは言わば、一人の命を前にしたとき、病院全体がチームとして動くための土台なのです。

【関連リンク】
・外傷蘇生センター記者発表のFUKUDAism記事
・福岡大学病院ウェブサイト

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