2026年のサッカーワールドカップ決勝戦が、7月20日(月・祝)午前4時(日本時間)から開催されます。準決勝でフランスを下した「無敵艦隊」スペインと、連覇を狙う王者アルゼンチンのFIFAランキング1位と2位のチームが激突する世界最高峰のカードとして注目を浴びています。
決勝戦を目前にして、スペインとアルゼンチンに在外研究の経験がある福岡大学の教員に、現地で暮らしたからこそ分かるその国の魅力を語ってもらいました。アルゼンチンについては、鈴木隆美先生(人文学部フランス語学科教授)のお話です。
サッカーをきっかけに、スペインやアルゼンチンなど、海外の国に興味を持つきっかけにしてください。
Q:「現地について、日本との違いで一番驚いたことは何でしたか?」


アルゼンチン、ブエノスアイレスの子どもは、例えば5歳の子どもでも深夜1時の公園で遊んでいます。
また、サッカー観戦の後には、真夜中に子どもがお父さんとサッカー談義をしながらアイス屋さんでアイスを食べているのが普通の光景です。
時間は守らない印象で、バスはカーチェイスが基本です。トイレの戸は鍵があるだけまだマシな状況です。
資本主義に適応する様子は伺えず、例えば電気屋の店員さんには売ろうとする気がないように見えます。お客さんらしき人と1時間サッカーの話をして、ハグして、「またな」、みたいな感じでした。
貧困のレベルが酷かったです。スパイクも買えない、ボールも10人に1人買ってもらえればいい方、という地域がありました。貧困の街の治安は良くないですが、一度仲良くなると、本当に仲間想いでもあります。
アルゼンチンには、「連帯の文化」「共に肩を寄せ合い生きていく」「強かさ」があります。その意味でも、サッカーとタンゴはアルゼンチン文化においては切っても切り離せない結び付きがあるように感じます。
Q:「サッカー抜きでその国を語るなら何ですか?」
アルゼンチンでは、タンゴだけでなく、とにかく皆踊ります。スーパーで買い物している主婦が、レジ待ち中に店内で流れる音楽に合わせて踊り出します。
牛肉の質は日本にはほとんど無い、「ぎゅっ」としまった赤身です。赤ワインとの相性が抜群です。マルベックなどのアルゼンチンワインも本当に美味しいです。家庭や仲間内での焼肉文化・バーベキュー文化は、とてもほのぼのしていて良いです。
南米文学は、ラテンアメリカの田舎を旅するととんでもなくよく分かります。ラテンアメリカならではの愛と嫉妬、狂気と優しさは、あの広大な大地に根付いています。
特に首都ブエノスアイレスの哀愁と優しさは、いわく言い難い。語ろうとすれば一冊の本でもまるで足りないくらいです。「移民の国」というのが自国のアイデンティティなので、ナショナリズムがすでにインターナショナルな感じがして訳が分からない感じです。
Q:「その国を一言で表すとしたら何ですか?」


やはり、タンゴですね。
Q:「あまり知られていない、実際に暮らしてみて感じた『意外な一面』を教えてください」

うだるような暑さの中での「メリークリスマス」です。
日本の桜に当たる木は、アルゼンチン、特にブエノスアイレスではハカランダになります。街路樹として全国的に都市には植えられ、春になると街が薄紫の花びらで彩られます。
地方都市はもちろん、ブエノスアイレスでさえ、建物の造りがだだっ広いです。広大な土地に広々とした建築物。そして空がよく見える。だからこそ国旗も代表のユニホームも、空色と雲の白であるのでしょう。白色は雲、自由と光を象徴し、それが広大な空にストライプ状に広がる様が、アルゼンチンに暮らすと体に染み入ってきます。自由と希望、そしてその裏の貧困と狂気が混じり合ったまま、無限の空に、慈愛の空(空色は聖母マリアの色でもある)に溶けていく、そんな雰囲気は、まさにアルゼンチンそのものでした。
Q:「ワールドカップの決勝、エールをお願いします」
メッシという神様が、もう一度奇跡を見せてくれますように。
