福岡大学では、2024年4月に障がいのある学生の相談窓口として、「障がい学生支援センター」を新設しました。
同センターでは、修学および学生生活についての相談や授業等における「合理的配慮」の申請を受け付けています。また、障がい学生支援等に関する講演会・講習会の実施やボランティア学生の育成等も行っています。
障がい学生支援センターでは、全ての方が平等に本学の施設やサービスを利用できることを目指して、工学部建築学科の野田りさ助教および野田研究室の4年次生が、障がいのある学生の協力のもと「バリアフリーマップ」を制作しました。
その取り組みは昨年秋にスタート。昨年末まで七隈エリアの施設等を中心に調査を行い、障がいのある学生の意見や要望を擦り合わせながら表示方法を考えました。今年に入ってからは烏帽子地区にエリアを拡大して実態を調査し、ブラッシュアップを行なって仕上げました。そして3月、ようやくバリアフリーマップが完成。4月に本学公式ウェブサイトにて公開しました。
公開後、多くの方々から、「とても分かりやすい」「ずっと作ってほしいと思っていた」「学内で開催されるイベントでも使える」等、反響が寄せられました。


制作にあたったメンバーで談笑しながら振り返る
指導にあたった野田助教に話を聞きました。
「ユニバーサルデザインや福祉空間を研究しています。もともと2021年にバリアフリーマップのベースとなるものを作っていました。研究室の4年次生たちと話して、障がいを持つ学生に直接意見を聞いて、ブラッシュアップしようとなりました。キャンパスは学生が使うもので、障がい学生の意見や考えを直接聞いて作ることが大切です。また、その学生同士で作り上げることにも意義があると考えます。今回は烏帽子地区にもエリアを広げて調査し、大学全体を表現しました。本学は敷地内のアップダウンが激しいため、有効に活用してもらえると嬉しいです。今後も定期的に見直していきます」と語ります。


バリアフリーマップ制作の経緯や思いについて語る野田助教(写真右の一番手前)


野田研究室の学生と障がいを持った学生が議論し合った(写真右:2021年の様子)
制作に携わった宮川紗良さん(法学部法律学科3年次生)は、「他の学生の話が聞けて勉強になった。今年から障がい学生支援センターが新しく設置され、相談しやすい環境ができました。今後もより一層、他の学生と障がいを持った学生にとって過ごしやすく、また、学びやすい環境になると良いです」と話します。
同じく横山莉音さん(人文学部教育・臨床心理学科4年次生)は、「このような貴重な経験をさせて頂きありがとうございました。他の障がいを持つ学生の方と話すことで新たな発見やどういったことに困っているのかを知ることができ、勉強になりました。バリアフリーマップは障がいを持つ人のためのものと思われがちですが、どなたでも分かりやすいように作成されているので、色々な方に見ていただけると嬉しいです」と語ってくれました。その他にも坂元光一朗さん(人文学部日本語日本文学科4年次生)、有畑宗一郎さん(法学部法律学科3年次生)も制作に協力してくれました。
また、調査・制作にあたった野田研究室の皆さんにも話を聞きました。
秀島朱音さん(工学部建築学科4年次生)、吉永光希さん(同)、吉崎優希さん(同)


創意工夫しながら制作した経験を語る4年次生たち
「自分自身が障がいを持たないため、それまで大変だと気付かないことが多かったですが、実際に車椅子を使ってみると、道には側溝が多く、傾斜もあり大変であることに気付き、視野が広がりました」。
「障がいの程度も学生によって違うため、この程度あれば通れるのではという意見もマップに反映できました」。
「学内に新しい建物が増えましたが、古い建物も多くあります。また、学内には坂道が多いため、バリアフリーがもっと広まると良いと感じました」。
「法律上クリアしている勾配の道でも、利用できる人とできない人がいます。そうした問題点を工夫しながら改善できると良いと思います」。
「今回の取り組みは、学部の垣根を超えたもので、9つの学部が揃ったキャンパスが福大の良いところと思います。他大学のバリアフリーマップも調べて、学生にとって一番使いやすいようにと考えながら制作しました」。
「将来は、設計の仕事に携わり、子どもたちが使いやすい建物を作りたいです」「公共施設に居心地の良い空間を作りたいと思います」「病院の設計等、健康に携わる仕事がしたいです」等、それぞれの思いを熱く語りました。
障がい学生支援センターの松永邦裕センター長(人文学部教育・臨床心理学科教授)は、「障がいを持った当事者の意見を直接聞き、その視点で作ることはとても良いことで、お互いに理解し合うことが大切だと思います。今回のバリアフリーマップの制作は、総合大学ならではの取り組みです。今後も課題を集約して、できることから活動を続け、人に役立つ人材になってほしいです」と学生に語り掛けました。


野田研究室の学生に語り掛ける松永センター長
今後もキャンパスをより安全に利用しやすくするための「バリアフリーマップ」を目指して、随時改訂する予定です。
「バリアフリーマップ」はこちらをご覧ください。
掲載情報については、障がいの有無にかかわらず、全ての方にご利用いただけます。
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関連リンク
福岡大学公式ウェブサイト 「障がい学生支援」