人をつくり、時代を築く 福岡大学  


   福岡大学創立75周年記念事業の一環として実施した「第4回高校生川柳コンクール」には、全国157校の高校生6,277人から13,127作品のご応募がありました。
大学内において厳正なる選考を行った結果、次のとおり大賞〔福岡大学長賞〕、優秀賞、入賞の各賞を決定しました。
 
 
  入選作品

 
  大賞[福岡大学長賞]  
   
  佐野 宏樹さん 福岡県・近畿大学付属福岡高等学校3年  
  【本人コメント】 
  思いがけない受賞、ありがとうございます。応募したことを知らなかった母はとても驚いていました。この川柳は、私が高校の合格発表の日、受験前の秋に二度目の大きな手術をした母に見せたかったという思いと、今度の大学の合格発表の時には“写すぞ”という決意のもとに作りました。今は元気に過ごしている母に、この作品を見せることになるとは思いませんでしたが、これからも体に気を付けて長生きしてほしいと思います。

【作品評価】
 生きている間に私たちは一体どれだけの「合格」を獲得しなければならないのだろう。この世に生を受けたこと自体もいくつかの偶然が重なりあった「合格」といえなくもない。子を思う母の心と同じ重さで子は母を思う。普通や平凡が幸せ、と願う病床の母に、子の「合格」は何よりの良薬であり親孝行だ。写メールに現代の風を感じる。
 


  優秀賞  
   
  渋谷 聖さん 福岡県・県立大川樟風高等学校3年  
  【本人コメント】 
 今回、受賞の連絡を聞いて本当に驚きました。二年生の時に授業の中で川柳について作り方を学びました。そして一学期の終業日に、校内川柳大会が実施され生徒全員で川柳を作ることになりました。文章を書くことについて少しは興味が合ったので、川柳についてもその面白さが少しずつ分かってきました。今回も与えられたテーマとは関係なく、ただ頭に浮かんだことを書いてみようと思いました。今こうして生きていることの意味を考えていたら、こんな句が出来上がりました。これからも作ってみようと思います。

【作品評価】
 若者がまぶしいのは多分に「多感」だからだ。一冊の本に感動し一つの歌に涙する。これはもう若者の特権といっていい。「何のために生きているのか」という哲学的な物思いにふけるのもこの頃。惰性を嫌いふっと息を止めてみる。「苦しい」ということを体験して初めて「生を確かめる」という行為を繰り返しながら“にんげん”は「生」を重ねていく。
 


  優秀賞  
   
  黒木 香奈子さん 宮崎県・日向学院高等学校3年  
  【本人コメント】 
 毎年夏になると、家の窓から正面に見える花火を家族で見るのがとても楽しみでした。しかし受験生ということもあり、花火大会当日も本当は見たかったのを我慢して、少し残念な気持ちでいました。そんな時に居間の方から聞こえてくる花火の音や、家族の歓声を聞き、夜空に輝く花火の光景を一人で思い浮かべ、花火を見た気分になり楽しんでいた時の情景の句です。目ではなく耳で楽しむ花火に別の美しさを覚えたことも込めています。

【作品評価】
 夜空を彩る花火。花火師はその一瞬に自分の思いを込め、見る人を夜空にくぎ付けにする。しかし、受験生には時間が無いのだ。その音で花火の色を想像するしかない。それは去年見た花火であり、家族や大切な友だちと見た花火である。「音だけの花火」、もうこれだけで詩になる。「合格」を目指す受験生の置かれている立場がよく表現されている。来年また楽しめばいいのだ。
 


  優秀賞  
 
携帯の 画面じゃなくて 僕をみて 飯村 大吾さん 北海道・北海道おといねっぷ美術工芸高等学校3年
思春期に 意外と言えない 「ありがとう」 大島 秀明さん 青森県・県立南部工業高等学校2年
今の自分 みんなのおかげ ありがとう 沢田 侑貴さん 秋田県・県立金足農業高等学校3年
友達と 過ごす時間が 宝物 菅生あゆみさん 秋田県・県立金足農業高等学校3年
わからない そんな時だけ 指名され 武田なつみさん 福島県・県立いわき総合高等学校2年
生活に 役立つ公式 見てみたい 斉藤 汐里さん 千葉県・県立柏の葉高等学校1年
思いやり 人だけでなく 地球にも 郡司 真子さん 東京都・都立調布南高等学校3年
学期末 成績赤くて 顔青し 中山 慧さん 東京都・白山高等学校3年
空っぽの 弁当にこめる ありがとう 井上 暁絵さん 岐阜県・岐阜女子高等学校1年
サイレンが 一点の重さ 物語る 曽根 佐介さん 静岡県・静清工業高等学校3年
離任式 鬼の教師の 目に泪 國島 昂さん 愛知県・県立豊明高等学校3年
親を見て 自分の夢に ふと気づく 日比 勇太さん 愛知県・弥富高等学校3年
君からの 言葉一つで うきしずみ 関本 仁美さん 和歌山県・県立熊野高等学校3年
サザエさん 明日の学校 思い出す 桃瀬 瞳子さん 滋賀県・近江高等学校1年
たくさんの 偶然があり 会えたんだ 浅野 智子さん 京都府・大谷高等学校1年
好きなんだ 毎日言える 演劇部 山形 優さん 岡山県・岡山市立岡山後楽館高等学校3年
空気読む しかし漢字は 読めません 塚 泰明さん 岡山県・県立岡山一宮高等学校2年
丸坊主 これが自分の クールビズ 平田 智大さん 岡山県・県立岡山一宮高等学校2年
『店長』と 寝言をいって バイトばれ 宇野 達彦さん 山口県・県立徳山高等学校1年
鬼教師 胸ポケットに 愛娘 呉 相泌さん 山口県・県立徳山高等学校1年
うとうとと ノートでもつれる 黒い線 竹重 惇史さん 山口県・県立徳山高等学校1年
成績の 変化はまるで 二次関数 徳原 諒さん 山口県・県立徳山高等学校1年
夏休み 友達欧州 僕補習 渡辺健一朗さん 山口県・県立徳山高等学校1年
初夏の風 ブランコ高く 足上げる 竹本 沙紀さん 徳島県・県立富岡東高等学校3年
辛いこと 笑いにチェンジ 日々前進 森 彩香さん 徳島県・県立富岡東高等学校3年
手花火に 君の横顔 照らされて 大山 眞史さん 愛媛県・県立新居浜工業高等学校1年
カブト虫 昔は林 今は店 福田 祐気さん 愛媛県・県立新居浜工業高等学校1年
広かった 父の背中は 今いずこ 田中 綾乃さん 福岡県・九州女子高等学校2年
いってきます 母とのケンカ後 ぎこちなく 池田 莉沙さん 福岡県・つくば開成高等学校 福岡開成2年
携帯を 失くして気づく 依存症 松井 翔さん 福岡県・つくば開成高等学校 福岡開成2年
髪切れと 怒る教師は 髪がない 稲垣 孝住さん 福岡県・福岡大学附属大濠高等学校2年
隠してた テストが何故か 食卓に 下田 凌司さん 福岡県・福岡大学附属大濠高等学校2年
台風よ どうしてそこで 曲がるのか 進藤龍之介さん 福岡県・福岡大学附属大濠高等学校2年
あなたとは 違うんですと 言われても 藤 健之さん 福岡県・福岡大学附属大濠高等学校2年
紅葉を しおりに次の 授業待つ 後藤 圭佑さん 長崎県・県立長崎工業高等学校3年
ゴメンねを 正面から言う 真の友 坂井 祐介さん 長崎県・県立長崎工業高等学校3年
大欠伸 周りに広がる ドミノかな 土井 卓さん 長崎県・県立長崎工業高等学校3年
くやしくて 雨と偽る その涙 西岡 紀栄さん 長崎県・純心女子高等学校2年
いりません その一言で エコになる 松本 南風さん 長崎県・純心女子高等学校2年
指先で つなぐ会話は 世界規模 浜崎 良康さん 長崎県・長崎南山高等学校3年
アルミ缶 オレの勘より 役に立つ 河野 涼介さん 熊本県・県立球磨工業高等学校1年
先生に 相談受ける 二者面談 小田 明穂さん 大分県・県立情報科学高等学校1年
通学路 疲れを癒す 四季の彩(いろ) 河野 達也さん 大分県・県立情報科学高等学校1年
電車通 揺れてる君に 揺れる僕 沓掛 育美さん 大分県・県立情報科学高等学校1年
先生の 知識がつまった 子守歌 竹永 篤史さん 大分県・県立情報科学高等学校3年
授業中 時計の針が 進まない 横山 淳二さん 宮崎県・県立宮崎工業高等学校3年
赤ペンの 減りに満足 受験生 角田奈帆子さん 宮崎県・尚学館中学校・高等部3年
「オグシオ」は 塩じゃないよ おじいちゃん 長友 理紗さん 宮崎県・日向学院高等学校3年
「夢がない」だけどなりたい 公務員 藤井 佑妃さん 宮崎県・日向学院高等学校3年
母悩む 血圧上昇 物価高 仲村渠典華さん 沖縄県・県立首里高等学校3年
 
  ※作品は都道府県別に北から並んでいます  


  総合評価  
   友達と過ごす時間が宝物 ゴメンねを正面からいう真の友 後になって「ああ、あの時が最も輝く時だった」という経験は誰しも持っている。それは「友と過ごす時間」。現在もこれからも。ゴメンねを言ってくれる友のありがたさ。 思いやり人だけでなく地球にも 一体この地球はどうなるのだろう。水の惑星という地球が汚されていく。人間は快適さと引き換えにこの惑星に温暖化という負荷を与えてきた。地球は決して人間だけのものではない。動植物を含めてあらゆるものの惑星なのだ。美しい惑星を未来へ引き継ぐこともまた人間の責任なのだ。 初夏の風ブランコ高く足上げる 空に向かって、明日に向かって高く蹴るブランコの爽快さ。初夏の風が背中を押す。上着を脱いだ白いシャツがまぶしい。弾ける健康的な若さ。 広かった父の背中は今いずこ あの頃の父の背中は海のように広大だった。背をよじ登り肩車で見た花火や祭り。いつしか父の背中を超えた。子が成長する、ということは当然親が衰えるということを知る父と子の愛、そして哀。 電車通揺れてる君に揺れる僕 青春のほろ苦い断面を川柳として表現した。「君」がいつもの時間のいつもの車両で本を読んでいる。その君を遠くで見ている僕。電車の揺れと胸の鼓動が重なる。今、青春のまっただ中。
 川柳は、社会や人間に温かいまなざしを持てる機会を与えてくれる五・七・五の短い詩でもある。
 
  梅崎流青  

次回の開催については、詳細が決定次第お知らせいたします。

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