福岡大学工学部電子情報工学科の小野晋太郎准教授は、株式会社オリエンタルコンサルタンツと共同で、AR(拡張現実感)技術を活用して生活道路の交通安全対策を可視化するツールを開発しました。
本ツールでは、スマートフォンやタブレット端末を道路にかざすだけで、路面を盛り上げて車の速度を抑える凸部(ハンプ)や車の進入を防ぐラバーポール(ボラード)などの交通安全設備を実際の風景に重ねて表示できます。これにより、対策設備を設置した後の道路の様子をその場で確認することが可能です。また、専用アプリのインストールは不要で、Webブラウザ上で手軽に利用できる点も特長です。
本成果は、行政機関や交通分野の関係者からも関心が寄せられており、11月13日(金)に札幌市で開催されるITSシンポジウムをはじめとした学会などにおいて、発表およびデモンストレーションを行う予定です。
本研究の背景と取り組みについて紹介します。
近年、住宅地の中にある生活道路では、歩行者の安全確保に向けた取り組みが進められています。特に、中央線や車両通行帯のない「生活道路」を中心に、自動車の法定速度が時速30kmへ引き下げられるなど、安全性向上への取り組みが強化されています。
生活道路の安全性をさらに高めるには、速度規制に加え、ハンプやボラードなどの物理的な対策を地域の状況に応じて組み合わせることが求められます。
そのためには、行政の担当者だけでなく、地域住民をはじめとする関係者が、対策によって道路がどう変わるのかを具体的にイメージし、共通認識を持つことが欠かせません。
これまで交通安全対策の検討や説明には、図面や写真が用いられてきました。しかし、今回開発したツールでは、現地で端末をかざすだけで、ハンプやボラード、歩車道境界ブロックなどを実際の道路空間に重ねて表示できます。
利用者は、対策設備の位置関係や設置後のイメージをその場で確認できるほか、画像として記録・共有することも可能で、現地調査・複数案の比較検討・地域住民への説明など、対策の検討から合意形成まで幅広い場面での活用が期待されます。
ARによる可視化イメージ
実際の風景
本ツールは、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の研究開発テーマの一環として開発したものです。
本学は、ARによる可視化技術やユーザーインターフェース(操作画面)を含むアプリケーション全体の開発を担当しました。一方、株式会社オリエンタルコンサルタンツは、生活道路における交通安全対策の専門的な知見を生かし、可視化する対策メニューや、行政担当者の利用を想定したツールの仕様・活用方法の検討を担当しました。
大学の技術力と企業の実務経験を組み合わせることで、現場で利用しやすい実践的なツールの実現につながっています。
小野准教授は、「使っているAR技術そのものは基本的なものですが、共同研究先や自治体の方々から想像以上の反響をいただき、現場にこうしたツールへの確かな需要があることを改めて実感しました。ブラウザ上で動作するため、アプリを自由にインストールできない環境では大きな利点になるはずです。実装部分の多くは研究室の学部生が頑張ってくれました」と話します。
※本記事で紹介した内容には、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の下で推進する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期/スマートモビリティプラットフォームの構築」(研究推進法人:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)(NEDO管理番号:JPNP23023)の成果が含まれています。
【関連リンク】
・(株)オリエンタルコンサルタンツ ニュースリリース
・工学部電子情報工学科
・小野晋太郎研究室
