FUKUDAism(フクダイズム)

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研究

九州地方で続く大気の霞み、新燃岳の噴煙が原因

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九州地方で7月1日(火)頃から、広範囲で大気が霞んでいる状態が続いています。福岡市内の地上観測では、SPM濃度(注1)やPM2.5濃度(注2)、火山性ガスに含まれる二酸化硫黄(SO2)濃度の増大が見られました(図1a、1b)。また、人工衛星の観測からは、九州地方の広範囲にわたり類を見ない規模でSO2濃度が増大している様子が観測されています(図2)。

シーロメータによる計測でも、7月1日(火)深夜頃から、高度1kmあたりにエアロゾル濃度が高い層が現れ,その後、地上付近から1kmでエアロゾル濃度の高い層があることが分かります(図3)。

福岡大学で採取されたエアロゾル試料を観察・分析したところ(図4)、鉱物としての火山灰粒子はあまり観察されず、硫黄(S)を含む粒子が多数観察されました。これは火山活動由来のSO2が大気中の輸送中の化学反応により、硫酸塩エアロゾルになっていることを示します。

気象データを解析すると、九州地方は広く高気圧が停滞し、新燃岳(鹿児島県)の噴煙が九州地方に留まりやすい状態が続き、九州地方から西日本地域に広域に広がっていることが分かります(図5)。

本学では、PMの成分やガス成分等ついてさまざまな観測を行っており、今回の煙霧について今後も詳細な解析を行っていく予定です。

・注1
SPM濃度:Suspended Particulate Mattersの濃度のことで,全サイズ領域の粒子の質量度を意味する。
・注2
PM2.5濃度:直径2.5m以下の粒子質量濃度を示す。
視程:見通しの距離を示す。

【お問い合わせ先】
福岡から診る大気環境研究所
(原 圭一郎、白石 浩一、山崎 明宏、高島 久洋)福岡大学理学部


図1

図1.
福岡市内で観測された (a)SPM濃度、(b)SO2濃度、(c)視程、(d)エアロゾル数濃度
SPM濃度とSO2濃度は、環境省大気汚染物質広域監視システムそらまめくん(速報値:https://soramame.env.go.jp/)により福岡市祖原で計測されたデータを使用した。視程は気象庁により福岡管区気象台(六本松)で計測されたデータを使用した(https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/index.php)。エアロゾル数濃度は気象研究所・山崎氏(福岡大学客員教員)より提供された。
 


図2

図2.
人工衛星により観測された二酸化硫黄濃度の例 (2025年7月1日10:45。韓国の大気環境静止衛星 GEMS L2 preliminary データ)。九州地方広範囲にわたり二酸化硫黄 (SO2) 濃度の上昇が観測された。
 


図3

図3.
福岡大学に設置したシーロメータにより観測された後方散乱係数の時間-高度断面図。
7月1日から7月3日にかけて、地上から高度およそ1.5 km に新燃岳の噴煙プリュームのエアロゾル層が観測された。
 


図4

図4.
福岡大学で採取されたエアロゾル粒子の電子顕微鏡写真と粒子元素組成(7月3日14:37-14:39にサンプリング) 図中の*印は捕集版由来のピークを示す。サンプリング・観察・分析は河原真由子さん(理学部4年次生)の協力による。
 


図5

図5.
7月2日9時の地上実況天気図と新燃岳からの前方流跡線解析結果。

天気図は気象庁(https://www.data.jma.go.jp/yoho/wxchart/quickmonthly.html)によるデータ。流跡線解析はNOAA-HYSPLITモデルを使用した(https://www.ready.noaa.gov/HYSPLIT.php)。流跡線の始点は新燃岳上空500mで、6月30日午前9時(日本時間)としている。

【関連リンク】
理学部ウェブサイト
福岡から診る大気環境研究所

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