FUKUDAism(フクダイズム)

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2022112
教育
研究

「保険とリスクマネジメント」~商学部の植村信保教授~

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福岡大学商学部の植村信保教授は、「保険会社の経営分析」を専門としており、長年外部から保険会社経営を分析し、アナリストとしても活躍しています。2020年から本学で教えています。最近は、新型コロナウイルスに関する医療保険についてもテレビ等で解説しています。植村教授に、研究内容などについて話を聞きました。


研究について教えてください

もともとの専門は保険会社の経営分析ですが、授業では広い範囲で「保険論」「リスクマネジメント論」を教えています。また、私のゼミ活動ではリスクと保険を学ぶ学生の全国規模での大会に参加することを目指して、日々取り組んでいます。10月末に中間報告、12月に全国大会が行われるので、ゼミ生は慌しく準備している最中です。この大会で何を発表するのか題目を決める過程でも、毎日の社会情勢にいかにアンテナを張っているかが関係してきますので、学生には「常にアンテナを張って、今社会で何が起きているかを把握すること」「インターネットで見る情報はアルゴリズムで自分の興味のあるものを表示する傾向にある。自分の身の周りで起こっていることだけを社会情勢と捉えてはいけない」と伝えています。

また、保険の初学者や同業界の関係者が、保険の仕組みと業界の全体像を学ぶための書籍『利用者と提供者の視点で学ぶ保険の教科書』などを著作しています。

研究を始めたきっかけを教えてください

大学卒業後、保険会社に就職をしました。それから格付会社のアナリストに転身し、そこで多くの保険会社が破綻していくのを目の当たりにしました。なぜ破綻したのか破綻要因の研究に興味が生まれ、働きながら大学院で博士号を取得。その後、破綻を防ぐためには今までの研究成果を生かせるのではないかと、金融庁で保険行政を担当していました。2020年から縁あって、本学で教員の仕事に就いています。これまで私が経験したことや研究してきたことを、次の世代につなげることができればと思いながら学生に教えています。私のように異色の経歴を持った教員は、それほど多くはないのではと思います。

−福岡での暮らしはいかがでしょうか

新型コロナウイルス感染症が広がったタイミングで本学に赴任したので、しばらくは学生の皆さんと直接会うことができず、楽しみにしていた福岡の美味しい食事も味うことができませんでした。最近は、ウィズコロナの行動様式が徐々に定着していますので、学生とのリアルなやり取りも、時には外食もできています。これまで東京・横浜を中心に活動していたので、いまだに日々新鮮ですし、何より町がコンパクトなのがいいですね。もっとも、飲食店で本学の学生から声をかけられたときにはビックリしましたが・・。

−今後の研究の目標について教えてください
いくら政府が規制によって最低限守るべきルールを定めても、コーポレートガバナンス(企業統治)に欠陥があったら、(つまり経営者への規律が十分でなく、不適切な経営に走るのを止められないのであれば)経営危機を招く可能性を高めてしまいます。特に保険会社では、経営破綻によって株主や一般の債権者だけでなく、多数の保険契約者が不利益を被ってしまいます。そこで、保険会社のコーポレートガバナンスの在り方について研究を進め、より実効的な健全性政策について何か示したいと考えています。

もう一つのテーマが保険会社のディスクロージャー(情報開示)です。保険会社の多くが非上場会社であり、株主やアナリストからの圧力が弱いためか保険契約者を含めた利害関係者にとって必要な経営情報が不足していると考えています。加えて、経営情報をどうやって関係者に伝えていくかという点にも課題があります。まずはこうした課題を明らかにしたうえで、保険会社ならではのディスクロージャーとその伝達の在り方を明らかにしたいです。


昨年の全国大会の様子