福岡大学人文学部教育・臨床心理学科の植上一希教授は、「専門学校における教育とキャリア形成」について研究しており、実際に専門学校へ足を運び、授業の様子や学生・教員の方々へのインタビュー等をしています。植上教授に研究内容や今後の目標について話を聞きました。
−研究について教えてください
「専門学校とは何か」という問いに基づく研究を行っています。45年余りで、1,000万人以上の卒業生を輩出してきた専門学校は、日本の代表的な職業教育機関です。この専門学校の実態・課題・意義を解明していくことを目指して、専門学校生の学びやキャリア形成、専門学校教員の専門性やキャリアに着目した研究を行っています。
研究で意識しているのは、『専門学校教育の現場のリアルをつかむ』ということです。そのため、実際に学校を訪ね、授業や実習の様子を見学したり、教員や学生の方々のお話をお聞きしたりすることを大事にしています。その中で語られる学びや教育に関する喜びや苦しみ、そして誇りにふれることができるのが、この研究の魅力の一つでもあります。
また、専門学校のリアルを社会発信していくことも、私自身の役割だと捉えています。その一環として、私が担当するゼミ(「専門演習I~IV」)では、学生とともに専門学校調査を行い、そこで得られた成果などを報告書や動画にして、発信しています。2021年度は、福岡外語専門学校を対象とし、外国人留学生とゼミ生との交流企画を半年にわたって企画・実施しました。学生の観点から、専門学校における外国人留学生の学びや生活の実態や意義を発信していくことは、学生の学びとしても大きな意味を持つと思っています。
この福岡外語専門学校への調査に関する動画は、文部科学省が運営する「知る専」というウェブサイトで公開されました。動画はこちらからご覧ください。

植上教授ゼミの様子

福岡外語専門学校での留学生とゼミ生との集合写真
−今後の研究の目標について教えてください

大きな目標は、『人々の専門学校観を変えること』です。専門学校は、若者たちのキャリア形成や社会の担い手を輩出するという点でも、非常に大きな役割を果たしていますが、まだまだそのような認識はなされていません。専門学校の関係者自身が自信を失うケースも多く見られます。だからこそ、科学的な見地から、専門学校の実態や意義を、社会的に発信していきたいと思っています。
研究成果としては、専門学校生の学びやキャリア形成に関して、単著(『専門学校の教育とキャリア形成―進学・学び・卒業後』大月書店)にまとめました。今後も専門学校教員の専門性とキャリアに関する著書にまとめていくのが、出版に関する研究目標です。
また、ゼミ生と共に調べる中で、『専門学校における外国人留学生の学びや生活』というテーマの重要性を私自身が強く感じるようになりました。このテーマに関しても、ゼミ生の力を借りながら、本格的に取り組む予定です。
-
関連リンク
人文学部教育・臨床心理学科ウェブサイト