福岡大学医学部の貴田浩志講師らの研究チームが、ウルトラファインバブル(直径1µm未満の超微細気泡)と超音波を使って、キャリアフリーのmRNAを細胞内へ届けることに成功しました。
メッセンジャーRNA(mRNA)は、細胞内でタンパク質を合成する際の設計図になるものです。近年、人工的に合成したmRNAの医薬品としての応用が進んでおり、特に新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンへの応用で大きな注目を集め、その有効性が確認されました。
mRNAが生体内で機能するためには、細胞膜を超えて内部の細胞質に送達されなければなりません。これまでは、人工的に作った“キャリア”にmRNAを搭載して、細胞内へ届ける必要がありましたが、この方法では薬効が下がるため、大量のmRNAが必要で、製造が追いつかないという問題点や、キャリアがアレルギーを引き起こすという問題点が指摘されており、安全で高効率なキャリアフリー(キャリアを用いない)でのmRNAの細胞内送達法の開発が求められていました。
ウルトラファインバブルは、直径1µm未満の超微細気泡で超音波の照射で破裂します。これまで、ウルトラファインバブルの超音波に対する性質は謎に包まれていました。今回の研究では、このバブルの性質の一端を解き明かし、破裂のエネルギーで細胞膜に一時的に孔を開け、細胞内にキャリアフリーのmRNAを細胞内に届けることに世界で初めて成功しました。
この技術はコロナウイルスのワクチンのみならず、さまざまな疾患に対するmRNAを使った遺伝子治療への応用が考えられる革新的な技術です。
なお、本研究成果は2022年6月1日(水)付けで、国際学術雑誌『Frontiers in Pharmacology』に掲載されました。こちらからご覧ください。
また、同研究内容を報告した、日本超音波医学会第95回学術集会での発表が奨励賞を受賞しました。
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研究中の貴田講師
