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2021104
研究
産学官連携

小型ハイブリッドロケット打ち上げ実験に成功① ~川端助教へのインタビュー~

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9月4日(土)に福岡県築上郡にて福岡大学工学部機械工学科の流体工学研究室と福岡大学学生ロケットプロジェクトが全長約1.3mの小型ハイブリッドロケット打ち上げ実験を実施しました。

実験に携わった機械工学科の川端洋助教と学生プロジェクトメンバーの今村幹太さん(機械工学科4年次生)・月足凪希(なぎ)さん(機械工学科3年次生)に話を聞きました。2回にわたってお伝えします。


<実験内容>
当日は9時から発射台の組み立て等の準備を開始し、12時30分より打ち上げシーケンス(打ち上げ準備)を開始、1620分に点火されました。ロケットは点火後約5秒で頂点に到達、11秒後に着水しました。着水後、内蔵していた膨張式フロートが展開し、回収船によって全機回収されました。ロケットは事前に実施した飛翔シミュレーションとほぼ同様の飛翔経路を辿ったと考えています。
また、
ロケット内に搭載した気圧センサのデータ取得に成功しており、今後、より詳細な解析を行う予定です。
以上のことから、本実験の目的であった福岡県内小型
ロケット発射場開拓と産学連携で製作した小型ロケット用発射台の実証、ロケットを題材とした工学教育を達成できたものと考えています。

※実験の詳しい内容については、こちら(工学部機械工学科個別サイト)

手順書を確認しながらロケットを組み立てる機体・電子回路担当メンバー

発射を待つロケット



●○川端洋助教に話を聞きました。○●
 

● ロケットに関する研究の魅力・打ち上げ実験の魅力を教えてください。
ロケットに限った話ではありませんが、世界で自分達しか知らない現象や事実を見つけた時は達成感があります。ロケットの研究はどうしても人手が必要で一人ではできない場面が多いです。一緒に頑張ってきた仲間達と成功や失敗を共有する瞬間が一番楽しい時間です。失敗することの方が多いですが、どうして失敗したのか、どうやったらうまくいくのかを何度も考え実行し、克服した時はとても嬉しいです。
打ち上げ実験は緊張感が醍醐味です。今まで仲間と一緒に一生懸命作ってきたものが成功するのか失敗するのかは、費やした時間や気持ちに左右されることなく、物理法則にのみ依存します。ロケットはその性質上、“少しだけフライトさせてみてうまくいくか試してみる”といったことが難しく、例えば、“高度1,000mを目指すロケットで5mだけ飛ばしてみる”といったことができません。その分あらゆる計算や地上でできる試験を実施して、目的の高度やミッションを達成できるかを検証しますが、ある意味で打ち上げ実験はぶっつけ本番になるわけです。この緊張感を乗り越え、目的としていたミッションや、自分が担当した機器が想定どおりに動いた瞬間はこれ以上ない達成感が得られます。また、私が学生の時は学生ロケット活動をしている大学は片手で数えられる程度でした。しかし今は多くの大学が学生ロケット活動を実施しており、全国に多くの仲間がいます。他大学と一緒に打ち上げ実験を実施する場や交流の機会があるので、全国に友達やライバルができます。そういった交流も楽しみの一つです。

● 今回の実験にあたって苦労した点を教えてください。
本学では初めてのハイブリッドロケット打ち上げ実験だったため、実験設備を0から用意する必要があった点が大変でした。また、今回は学生への実践的工学教育が大きな目的の一つであり、学生にロケット等の設計のポイントを伝えつつ自分たちで試行錯誤してもらう必要がありました。コロナ禍ということでリモートで進めてきましたが、“設計に関するポイントをいかにうまく伝えるか”というところに苦労しました。
また、当然ながら学生は未経験かつ学部の1年次生もいたため、基礎的な工学用語や工具の使い方から教える必要がありました。設計や実験に関しては安全を十分に確保した上で、可能な限り口を出さず学生に任せました。失敗も多く、時間もかかりましたが、自分たちで考え実行し、結果を考察する力を身に付けてくれたと実感しています。


● 今後の展望を教えてください。
今後は産学連携をさらに推進し、ロケットの研究開発を通して福岡県をはじめとした九州地方におけるロケット産業の発展と人材育成に寄与していきたいと考えています。福岡県は宇宙ビジネス創出推進自治体に選定されており、宇宙産業へのサポートが非常に手厚い自治体の一つです。このような環境を最大限生かし研究開発を進めていきたいと思っています。
現在、来年度中の打ち上げを目指して、NPO法人円陣スペースエンジニアリングチーム(e-SET)様と共同で新しいエンジン開発を行っています。大学と企業がそれぞれ得意分野やノウハウを共有しロケット開発を行うことで、ロケット産業の基盤が構築されていくことを期待しています。また、最近は民間による宇宙開発が日本においても活発化しており、求められる人材も多くなってきました。ロケット開発を通して、
民間の宇宙開発関連企業に求められる人材も育成できればと考えています。

 

  • 工学部機械工学科についてはこちら(福岡大学公式ウェブサイト)