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202098
研究

【基盤研究機関研究所紹介】薬毒物探索解析研究所~薬物分析法の改良・新たな分析法の開発/大量服薬による自殺予防対策~

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福岡大学では、研究活動の活性化と研究水準の向上を図り、本学における研究基盤の将来的構築に寄与することを目的に研究所を設置しています。

FUKUDAismでは、10ある「基盤研究機関研究所」について、一つずつご紹介します。

今回は「薬毒物探索解析研究所」の研究所長・久保真一教授(医学部)に話を聞きました。


  • 研究所について、教えてください。

本研究所は、文字どおり、薬毒物の探索解析に関する研究に取り組んでいます。特に、福岡という地域の課題解決を目指しており、性犯罪が多い福岡の現状から“デートレイプドラッグ”(DRD)の研究に取り組んでいます。また、飲酒運転撲滅をテーマにアルコール(エタノール)以外の飲酒マーカーの探索や救急医療機関に搬送される、中毒による自殺未遂者の実態調査とその後の有効な治療システム開発のなども行っています。


高性能の機器が並ぶ質量分析室の風景

  • 薬毒物探索解析研究所」で行っている研究について、教えてください。

・毛髪からのデートレイプドラッグ検出法の確立

性犯罪の際に、睡眠導入剤等のいわゆる“デートレイプドラッグ”(DRD)と呼ばれる薬物を使用し、被害者が抵抗できなくした上で、犯行に及ぶことがあります。このような犯罪の場合、血液や尿からDRDを検出して、犯罪に使用されたことを証明します。しかし、被害発生後時間が経ってしまうと、血液や尿からDRDを検出することはできなくなります。一方、毛髪には、被害発生後、時間が経ってもDRDが含有されています。毛髪に残された微量のDRDを検出することで、犯罪に使用されたことを証明できます。本研究所は、毛髪からDRDを検出する方法を研究し、使用されたDRDの種類や時期の特定を行うことを目的にしています。

※詳細はこちら:Research, vol.25, no.1, 2020:41-43ページ

・薬剤および中毒物質を用いた自殺企図に関する研究

自殺企図の手段として最も多く用いられる大量服薬や中毒物質の使用について、救急医療機関に搬送された自殺既遂症例、自殺未遂症例に関する実態調査を行い、自殺予防の方策についての検討と実質的な予防に向けたシステムに関する提言を行うことを目的にしています。

 

  • この研究所での研究は、将来的に人々との暮らしにどう影響しますか。

・2015年のカフェインの研究では、エナジードリンクをはじめとするカフェイン飲料・製剤の危険性を、広く社会に認識してもらうきっかけになりました。

・DRDの研究は、過去の性犯罪被害の証明にもなり、ひいては、性犯罪の抑止につながればと思っています。

・飲酒マーカーの研究も、飲酒運転の証明、抑止につながればと考えています。

他の自殺企図手段に比べて、中毒による自殺企図は軽いものと考えられがちです。このため、救急医療機関での対応が十分でない場合があり、また必ずしも精神科的な継続治療に結び付かないという事態も生じています。殺は個人的要因と社会的要因が複合的に重なったときに生じるものであり、さまざまな知見や技術を結集してはじめて予防が可能になります。
 

  • 所長である久保先生がご専門にされている研究の魅力、面白さを教えてください。

私の専門は、法医学です。死因の究明、犯罪事実の証明に日々取り組んでいますが、その中から、社会に還元できることもあり、その発見に魅力と面白さを感じています。
 

最新型の液体クロマトグラフ質量分析計

精神科自殺予防グループのメンバー

  • 研究の詳細はこちら(薬毒物探索解析研究所『年報』2019年度版)
  • 薬毒物探索解析研究所のウェブサイトはこちら