FUKUDAism(フクダイズム)

  • facebook公式アカウント
  • twitter公式アカウント
  • Instagram公式アカウント
2020722
地域連携

地域の方々と双方向で福岡の歴史を紐解く~歴史講座~

  • facebookでシェアする
  • twitterでシェアする
  • LINEでシェアする

福岡大学では、さまざまな地域連携活動を行っており、今回は、福岡市にある片江公民館(城南区)および柏原公民館(南区)で行っている「歴史講座」について紹介します。

本取り組みは、片江公民館では4年目、柏原公民館については6年目を迎える人気の講座です。講座は主に本学大学院生・学部生が講師を務め、教員のサポートを得ながら受講生と双方向で学び合い、自分たちの住む土地に関心を向けていくことがねらいです。

2020年度も、片江公民館では、「縄文・弥生時代の日韓交流」「福大周辺の古墳と須恵器」などをテーマに、柏原公民館では「福岡市南区の古代と古代瓦」「野多目遺跡・板付遺跡の水田について」などをテーマに講座を開講しています(新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、予定が変更にはなりましたが6月末からソーシャルディスタンス等に配慮した上で講座を実施しています)。

本取り組みについて、担当する桃﨑祐輔教授(人文学部歴史学科)および西田尚史助手(同)に話を聞きました。
※桃﨑教授からの追加コメントはこちら


ー市民の方が講座に参加する意義を教えてください。
桃﨑先生>
福岡市の片江(城南区)や柏原(南区)などの油山山麓は、ニュータウン開発で多くの古墳や遺跡が調査・破壊されました。高度成長期からバブル期にかけてニュータウンに入居された方々の多くは最早70~80代前後です。「生まれ故郷ではないけれど、終の棲家となった自身の町の歴史を知りたい」という潜在的な欲求があることに気付かされました。

自分が住んでいる場所の歴史を遺跡や出土品から知っていただくことで、そこに愛着やアイデンティティや好奇心、探求心が生まれたと感じましたし、もともと住んでいた方とも歴史を共有することで分かり合える場面もありました。

西田先生>
地域の歴史は研究者だけのものではなく、そこに住む市民に還元されるべきものと考えています。講座の話題となる地域の歴史調査・活用も、可能な限り市民の方々の関心に沿ったテーマを選び、市民と大学が協力し企画立案する「市民参画」を目指しています。例えば、市民の方と企画・立案・実行した古墳調査、史跡散歩、資料館から資料を借用し公民館に展示する「1日特別展」を開催したりしました。

 

ー学生(院生)への地域活動を通じて得られる教育効果を教えてください。

 

桃﨑先生>
バンド活動を行っていた学生が「市民講座はライブ感覚だ」と言っていたことが記憶に残っています。教室ではなかなか生まれない、調査や講座の化学反応による、リアルタイムの知の創造を感じたようです。学生を孫や息子のように温かく見守り、成長を喜んでくれる市民の方々は、学生に安心する「居場所」をつくってくれます。

西田先生>

実際に歴史講座を受講されている市民の方との交流を通して、専門知識の咀嚼や発表技術向上などはもちろん、「大学が地域とどうかかわるべきか」を模索している歴史学(考古学)活用の最前線に触れることができます。

ー参加された方の声をお教えください。

●〇学生からの声〇●
「1日特別展の手伝いに参加した際、自分の住む地域の歴史を実際の資料を見ながら学ぶことができたのは、貴重な経験でした(学部3年次生)」

「実際に講座を通して自分の学んでいることを分かりやすく市民の方に伝える工夫が必要でした。その過程で、自分自身の学問への理解も深まったと思います(学部4年次生)」

●〇地域の方からの声〇●
柏原で講座や調査に参加されたOさんは、奥様を先に亡くされたこともあり、毎回の歴史講座を楽しみにしておられました。Oさんが自宅の納屋にあった割れた壺を接合して、その写真を携帯で送ってくださり、これがタイの16世紀の壺であったことから、タイから硝石を輸入した容器ではないかと考えられたため、付近の火薬関連遺跡の探索が始まりました。Oさんはその後亡くなられましたが、この成果は国際学会でも発表し、幕末が好きな武田鉄矢さんにも説明する機会がありました。

 

石造物を見学する受講者

学部生・大学院生も講師を務める

源蔵池(城南区)採集の鉄滓を見学

2020年6月末からもソーシャルディスタンスに気を付け講座を実施