11月22日(土)~24日(月・祝)、神戸市で開催された「第35回日本医療薬学会年会」において、福岡大学薬学部の白石ちひろ助教(健康危機管理薬学研究室)が「Postdoctoral Award」を受賞しました。
「Postdoctoral Award」は、医療薬学分野の研究課題に取り組む学業活動を支援・活性化することを目的として、優れた研究業績を有し、将来が期待される会員を表彰するものです。
白石助教が受賞した研究は、「オラパリブ投与患者における貧血発現の実態とその要因を明らかにすることを目的とした後方視的観察」です。
本研究では、がん治療薬「オラパリブ」を服用する患者さんで、貧血の起こりやすさとその特徴を調べました。「オラパリブ」は効果が高い薬ですが、重い貧のため薬の減量や治療の遅れにつながることがあります。調査の結果、「オラパリブ」による貧血は比較的よく起こり、赤血球が大きくなるタイプが多く、味覚異常や食欲不振と関連していました。また、過去に白金製剤を多く使った人ほど貧血を繰り返す傾向がありました。一方、日本人患者では葉酸やビタミンB12の不足は見られず、貧血の原因は葉酸不足だけでは説明できない可能性が示されました。そのため、葉酸の補充は不足が確認された場合に限ることが望ましいと考えられます。
本研究の成果は、オラパリブ治療中の貧血の起こり方や原因を明らかにすることで、適切な検査や副作用対策につなげ、患者さんがより安全に抗がん剤治療を続けられる医療づくりに役立ちます。
白石助教は、臨床薬剤師としての実務経験を継続しながら大学院での研究活動を行うことで、臨床現場だからこそ得られる視点や臨床マインドを培ってきました。現在は、病院や地域と連携した臨床研究を精力的に展開しています。
表彰される白石助教(右)
受賞者の記念撮影
白石助教は、「このような栄誉ある賞を賜り、誠に光栄に存じます。本研究は、各診療科の先生方との共同で実施したものであり、決して私一人の力で成し遂げられたものではありません。ご協力いただいた多くの皆さまに、あらためて深く感謝申し上げます。今後は学生も交えながら、病院や薬局の先生方と連携し、臨床現場に根ざした研究活動に積極的に取り組むことで、将来、臨床の第一線で活躍できる薬剤師が一人でも多く育っていくことを願います」と話します。
【関連リンク】
薬学部ウェブサイト
