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2021624
医療

福岡大学病院で脳死肺移植を2例同時に実施 ~第2回:2例同時肺移植の難しさ~

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福岡大学病院の肺移植チームは、4月7日(水)、福岡大学病院において脳死肺移植を実施しました。

今回は、お一人のドナーから頂いた両肺を左右に分け、お二人の患者さんに同時並列で移植を行うという形態の肺移植(Paired lung transplant)となりました。

臓器移植医療センター長も務める白石武史診療教授に、肺移植について話を聞きました。3回に分けてお伝えしています。


―2例同時移植(Paired Lung Transplant)がなぜ行われるのですか。
脳死臓器提供者(ドナー)から肺が提供される場合、臓器提供は待機リスト順に行われます。提供される肺は両肺(左右2つの肺)であることが多く、もし臓器提供を受ける最上位の患者さんが「片肺移植」を受けられる場合、残った反対側の提供肺は次の順位の方に回されます。例えば、東京で提供された肺が左右に分けられて右は九州へ、左は東北へ送られることがあるということになります。

―「片肺移植」が同じ施設で行われる可能性もあるわけですね。
そうです。もしある施設(例えば福岡)で2人の片肺移植希望患者さんが近接した順位で待機されていた場合、ごくまれに「福岡大学の(例)34番目・35番目候補の二人が同時に片肺移植候補」になる場合があります。この場合、実施施設が二人同時の実施を決断すればその両肺は(34番目・35番目のお二人用として)福岡へ送られます。福岡が「2件同時は無理」と判断すれば、片方の肺は他の施設へ送られ、福岡大学の35番目の待機患者さんは機会を逸することになります。

―2例同時移植(Paired Lung Transplant)の難しさとはどのようなところですか。
肺移植は大変大きな手術で、実施には呼吸器外科(肺移植外科)の他に、心臓血管外科・麻酔科・体外循環技師・熟練した看護師の協力が必要です。関与する外科医だけで6人以上、麻酔科医が4人、その他スタッフ総勢で20人くらいのチームとなります。また、ドナー肺はドナーの入院先で摘出され、福岡へ持ち帰ってくることになりますので、いわゆる「ドナー班」にも熟練した人員が必要です(4人の胸部外科医)。

脳死提供肺は摘出後8時間以内にできるだけ短時間で移植を完了する必要がありますので、福大病院へ移植肺が届き次第迅速に移植を実施しないといけません。従って、Paired lung transplantが行われる場合、その2つの手術は同時並行で行う必要があります。

肺移植は胸部外科の手術の中で最も技術度の高い手術であり、かつ緊急手術として行われます。習熟度の低い施設では執刀医は最も経験豊富な1人しかいないことが多く、並列して2例の肺移植を行うのは難しい現実があります。また、2例の肺移植を同時に行うには、手術スタッフのマンパワーや設備に対する負荷も相当に大きなものとなります。

脳死肺移植を2例同時に実施するには、「肺移植チーム自体の能力」に加え、「施設(病院)としての極めて高い能力」が必要となります。それらの能力を持ち合わせることは大変難しく、それが2例同時移植の難しさと言えます。

これまでにPaired Lung Transplantを実施できたのは、東北大・京都大・大阪大の主要な肺移植3施設のみで、今回、福岡大がそれに加わりました。福岡大学肺移植チームと福岡大学病院の能力がさらに高まったことを示す証左であろうと考えています。



2つの手術室で同時に手術が実施される