『福岡大学学園通信』第72号(令和3年12月発行)では、「学びの証」と題して、さまざまな分野で学ぶ学生たちの卒業論文・修士論文を紹介しました。
その続編として、卒業論文・修士論文から導かれた結論や成果、今後の課題などについて伺いました。ぜひご覧ください。
今回は、医学部看護学科の大久保遥希さんの論文「湯たんぽの安全安楽な使用方法の検討」を紹介します。

◎卒業論文のテーマ
湯たんぽの安全安楽な使用方法の検討
◎論文の概要
看護技術の一つに罨法(あんぽう)があります。温めたり冷やしたりして苦痛を緩和する方法です。湯たんぽは温罨法の一種です。湯たんぽは施設や家庭でよく使われますが、使い方を誤ると、低温熱傷などの事故を起こします。
教科書には、「足元から10cm離して使用」とありますが、実際にはもっと近づいたり触れていたりして、熱傷を起こします。なぜ正しく使われないか、原因を探ろうと寝床内の温度変化を機器を使い経時観察しました。湯たんぽの種類やカバーの種類、使用方法など条件を変えて寝床内温度を観察し、安全で効果的な温罨法を検討しました。
そして、条件のいずれでも、「10cm離す」と効果的な寝床温度に到達しないことが判明しました。最適な寝床温度の条件を試していると、「ゴム製湯たんぽをネルの布でカバーし湯温60°Cで 5 cm離す」方法が、最も安全で保温効果も得られると結論づけました。この方法での学生に実証してもらったところ、32°Cを上回る寝床内温度に達すると「温かい」と感じることが分かりました。
◎このテーマに決めたきっかけは?
湯たんぽの事故は、頻繁に起きており課題です。そこで、湯たんぽの効果的な使用方法について研究することにしました。
◎論文を通して得られたことや今後の課題について
興味深い知見が得られ面白かったです。今後は、他の条件ではどのような結果になるか検証を重ねることと、被験者からの客観的データを増やすことが課題です。
◎今後に生かしたいこと
現場で働く中でも常に疑問を持ち、今回学んだ研究プロセスや手法を用いて、よりよい看護サービスを提供したいです。
◎福大での4年間を振り返って
ゼミのメンバーと互いに協力し、高め合いながら研究を進めることができました。先生方も親身に研究に寄り添ってくださいました。