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2022513
教育
研究

【学びの証】『グリム童話集』における狼の表象 ~「赤ずきん」の変化の諸相 -岩熊 彩乃さん-

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『福岡大学学園通信』第72号(令和3年12月発行)では、「学びの証」と題して、さまざまな分野で学ぶ学生たちの卒業論文・修士論文を紹介しました。

その続編として、卒業論文・修士論文から導かれた結論や成果、今後の課題などについて伺いました。ぜひご覧ください。

今回は、人文学部ドイツ語学科の岩熊彩乃さんの卒業論文「『グリム童話集』における狼の表象~ 「赤ずきん」の変化の諸相~」を紹介します。


◎卒業論文のテーマ

『グリム童話集』における狼の表象  ~「赤ずきん」の変化の諸相~

◎論文の概要

グリム版の「赤ずきん」の初版と第7版を比較すると、狼の表象に変化が見られます。赤ずきんの素直さや、狼の人間から獣への豹変を描くことで狼の悪役イメージを強め、倒されることに正当性を持たせようとしています。

さらに、グリム版とペロー版(シャルル・ペロー氏の散文による物語)を山本博志氏の研究に基いて比較したところ、結末の違いや教訓の有無に差異があります。これは、赤ずきんの責任の重さや、作られた目的による違いと考えます。

平成期の日本版「赤ずきん」の絵本を野口芳子氏の研究を基に比較すると、2つの特徴があります。一つは、表現の簡略化です。これは、話を分かりやすくするためと考えられます。もう一つは、狼の表象の変化です。これは狼についてさまざまな視点が生まれたからだと考えられます。また、日本では第二話がほとんどの場合で省略されていることから、グリム版やペロー版のように教育を目的としては作られていないことが分かります。つまり、日本における「赤ずきん」は、「お話」として分かりやすくして、広く流布させようとしたことが見えてきます。

◎このテーマに決めたきっかけは?

野口芳子氏の論文を通して、『グリム童話集』の「赤ずきん」の物語は版によって結末が変化していることや描かれる狼の姿が変化していることが分かり、なぜ変化が生じるのかと疑問を持ったからです。

◎論文を通して得られたことや今後の課題について

論文制作では、詳細に検討することが重要だと学びました。自分の疑問を認識し、各方面から検証し、答えを探すことが大切です。
赤ずきんが祖母のもとへ行くのに、なぜ母親は一緒に行かなかったのか。この疑問については、今後の研究課題にしたいです。

 

◎今後に生かしたいこと

当初は結論がうまくまとまらなかったり、資料を上手く活用できなかったりして苦戦しましたが、先生からアドバイスを頂き、何とか書き上げることができました。詳細に理解することや、必要なものを見極める技術を今後に生かしていきたいです。

◎福大での4年間を振り返って

自分なりに早めに準備したり、計画を立てて勉強した4年間でした。専門教育科目だけでなく共通教育科目でも成績アップできました。