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2023531
卒業生

-MGH/Harvard medical school Assistant Professor 早川 和秀さん-

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MGH(マサチューセッツ総合病院)/Harvard medical school
Assistant Professor

早川 和秀 さん(2003年薬学部薬学科卒業、2005年薬学研究科博士課程前期修了、2007年薬学研究科博士課程後期修了)

アメリカ・ボストンのMGH/Harvard medical schoolでAssistant Professor を務める早川さんに、現在のお仕事やこの仕事をするに至った経緯、在学中のことなどを伺いました。


  • プロフィール
    名前:早川 和秀(はやかわ・かずひで)
    経歴:熊本県八代市出身。1999年薬学部薬学科入学。2003年に薬学部薬学科卒業、福岡大学大学院薬学研究科の博士課程前期、後期を修了した後、ポストドクターとしてアメリカへ留学。現在はMGH/Harvard medical schoolでAssistant Professorとして研究に励む日々を送る。


 

ー福岡大学に進学した理由

熊本県八代市の出身です。物心ついたときから、自分は一生八代で生活するのだろうと思っていました。大学進学時も、熊本県内の大学に進学しようとしていましたが、不合格となってしまい、併願していた福岡大学薬学部に進学することになりました。薬学部へ興味を持ったのは、父が薬品の卸売の仕事をしていたためです。

県外に出ることは無いと思っていたので、多少の不安はありましたが、不安よりも今までと違う新たな生活が始まる、ということにワクワク感を感じていたのを覚えています。今はアメリカで研究をしているのですが、大学進学を機に「県外に出る」という決断をしたことが、その後の私の人生の起点になったと思います。

ー福岡大学在学中について

そういうわけで福岡での生活が始まるのですが、右も左も分からない私に当時声を掛けてくれた友人がいました。彼とは意気投合し、一緒に大学在学中にさまざまな経験を積むことになります。同じ軟式テニスのサークルに所属していましたし、彼に連れられて雑誌の写真撮影会に行ったり、他大学の学園祭のダンスコンテストに参加したりと、今までの自分では考えられないようは派手な舞台に立つ勇気をもらいました。彼のおかげで、学生時代はさまざまなことに好奇心旺盛にチャレンジできました。今でも仲の良い友人です。

学部在学中は、3年次生から応用薬理学の研究室に所属しました。大学(学部)を卒業するタイミングで、当時内定をもらっていたドラッグストアの薬剤師になるか、それとも大学院に進学するか、少しだけ悩みましたが、“研究”という言葉に何となく惹かれて大学院に進学しました。大学院では、「脳梗塞の治療薬を探索する」というテーマで研究に励みました。博士課程前期の応用薬理学教室、後期は薬学管理学教室にそれぞれ所属し、研究室メンバーとも仲良く過ごしました。当時は、朝から晩まで研究室にいるのが楽しかったですね。
 

学会発表で(中央が早川さん)

ハロウィンの日に研究室で

ー現在のお仕事をするに至った経緯

大学院時代は、論文発表や学会での発表など、博士課程後期を修了するときには13報の論文発表を行っていました。名古屋で行われた日本薬理学会で学会優秀発表賞を頂けたのは特に嬉しかったですね。次第に海外留学に興味を持つようになり、2009年4月、脳梗塞研究の第一人者である Dr.Eng H.Loのもとへポストドクターとして留学しました。はじめは海外学術振興会から2年間の留学サポートを得て研究を続け、その後は現地で研究費を獲得しながらMGH/Harvard medical schoolで研究を続けています。アメリカへ渡って14年目になりました。

ー現在のお仕事の内容について

現在は、MGH/Harvard medical school のAssistant Professorとしてラボの運営に励んでいます。

私の研究室では、脳梗塞後の脳細胞同士の相互作用について研究しています。2016年のNature誌では、脳のアストロサイトのミトコンドリアがその近くにいる神経細胞に移動し、神経細胞死を抑制する、という報告をしました。このミトコンドリアが細胞間を移動できる、というメカニズムを利用して、ダメージを受けた細胞を救済する手法を見つけ出そうとしています。

最近は、三島健一先生(薬学部長)をはじめ福岡大学薬学部とも共同研究を行い、単離したミトコンドリアをリポソームのような構造に収めて処置すると、脳梗塞後の障害領域が小さくなる、という報告をしました(Commun Biol . 2022 Jul 25;5(1):745. doi: 10.1038/s42003-022-03719-9.)。
 


現在の研究室のメンバーと

ーお仕事の苦労ややりがい

最も大変なのは、研究費を獲得するところです。所属の大学によっては、大学から研究費がサポートされるところもあると思いますが、現在所属するMGH/Harvard medical school は、自身で研究費申請を行い、そこから研究材料費、雇用費、自分の給料を賄う必要があります。それが途絶えてしまうことは、この場から立ち去らなければならないことを意味します。

しかしながら、一度研究費(NIH R01 等)を獲得できれば、問題が無い限り5年間はサポートされます。その間に、申請した研究内容を遂行しながら新たなアイデアに挑戦し、5年が過ぎる前に再び研究費を申請する、という生活を送っています。

ー今後の目標

ミトコンドリアは、全身にあるエネルギー産生に重要な細胞小器官です。つまり、全ての病気に対してミトコンドリアが関わっている、ということです。ミトコンドリアが弱ってくれば、エネルギーを得ることはできません。脳梗塞のみではなく、さまざまな疾患でミトコンドリアの機能は重視されています。現在の研究内容がいつかヒトの役に立つ日がくれば、これ以上に幸せなことはありません。

ー最後に、福岡大学で学ぶ後輩へのメッセージをお願いします。

 

上手くいかない時もありますが、それは一つの道しるべ。その後必ずチャンスはやってくるはずです。

自分の直感(ワクワクすること)を信じて決断していくと、楽しい人生を送ることができると思います。ぜひ自分を信じて、大学生活を存分にエンジョイしてください!先のことを考え過ぎても、必ずしもそうなるとは限りません。余り力み過ぎなくていいと思いますよ。