福岡大学 大学案内2026
8/172

006座談会なぜ、大学? なぜ、福岡大学? を、考えてみた。Special橋口健人 さん /機械工学専攻。材料の強度について研究。英・オックスフォード大学で開催の「EPRI Workshop on Hydrogen Embrittlement」で最優秀者に贈られるBest Poster Awardを受賞。国内唯一の物質・材料科学の国立研究開発法人「NIMS」での研究実績もある。 でも、今は大学全入時代。大学生であることや、福岡大学の学生であることだけでは、価値を持たないということに学生自身が気付き始めています。今は「大学で何を身に付けられるのか」「自分のどの部分が成長できるのか」という目線で大学を選ぶ時代に移り変わっています。意識が高い学生たちは、入学前も入学後も「福岡大学じゃないと得られないこと」を積極的に見極めようとしています。私たち世代と、2010年以降の学生とでは、「大学で学ぶ」ということの意味合いが決定的に違うことを知っておいた方がいいでしょう。鶴田 面白い視点ですね。発達学的観点では、学ぶことには段階があるとされています。学生時代を遡ってイメージしてほしいのですが、第一段階の小学校は、「知る」がメインでした。今から生きていく日本社会や知識を知ることから始まるんですね。中学校では、小学校で得た知識を「理解する」フェーズに入ります。さらに、高校では、得た知識を使って「応用する」という段階へと進みます。では、大学はどうでしょうか。大学では「批判的思考力(クリティカルシンキング)」を身に付けることが期待されます。これは、他人の意見を否定や批判するという意味ではありません。今まで常識と思ってきたことが、本当に正しいのか、今の時代に合っているのかを、疑ってみる態度を取ることを意味します。多角的に見るとも言えます。最終的に社会は大学で、常識を疑い、正しくなければ改善できるような人材が育ってほしいと期待しているわけですね。その最たる例が、研究だと思いますね。橋口 なるほど。確かに研究は、疑ってみることから始まります。鶴田 その通りです。大学の使命は、広義には批判的思考力を備えた人材を育成し、時代と共に変化していく社会に送り出すことでしょう。一方で一人一人は、自分が幸せになるために学ぶことも大事です。私としては、社会をつくり変えることを自身の幸せに繋げることができる人材を、福岡大学からより多く輩出できたら嬉しいと思っています。ますね。その上で、夢や目的を見つけるために、ぜひ「深く学ぶ」ということもやってもらいたいと思います。ウインドーショッピングのように、あれやこれを見ているだけでは前には進めません。何かを深く学んでみると、その先に面白さが見いだせることがあります。橋口 実験みたいですね。実際にやってみないと分からない、やることで少しずつゴールに近づく感じが似ています。鶴田 そうですね。他にも、山登りに似ていると思います。山の麓から山頂を目指して登っていくと、どんどん自分の視界が広がります。そうすると、山頂と思っていたところには尾根があり、実は裏にもっと高い山があることに気付いたりします。勉強にもそういうところがあるので、まずは学ぶことをはじめて、そこから深く学んでいくことをやってもらいたいと思います。植上 実際に私も、学びながら好きな学問、就きたい仕事が見えてきた学生を多く見てきました。それができるのも大学の良さだと思いますね。 「大学で学ぶ」ってなんだろう?植上 私は1990年代に大学に入りましたが、1980〜1990年代に大学生だった人たちにとっての大学は、大学=学歴でした。どこに入ったかが重要で、そこで何を学んだかというのは大して問われなかったんですね。高校生の保護者の方たちや学校の先生の多くが、そのような時代に大学に行かれているのではないかと思います。発達段階ごとの学習で身に付けたいスキル発達段階スキルの具体的な内容スキル小学校中学校高 校大 学知 る理解する応用する批判的思考学習者がまっさらな状態から、特定のスキルや知識の存在を認識する。学習者が知り得た情報を整理し、自分の中でその意味や全体像を把握する。理解した知識やスキルを、実際に使えるようになる。無意識の前提を疑い、論理的で偏ることなく、物事を多面的、客観的にとらえて思考する。〈 鶴田教授の話等から作成 〉

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る