誰もが気持ち良く働ける社会へ。
国内外で労働法制度を研究

企業勤務の経験を基に雇用平等を中心とした研究

所先生は、労働法全般について研究しています。労働法とは、「労働基準法」「最低賃金法」「男女雇用機会均等法」「労働組合法」など、働くことに関する法律の総称です。

大学生の頃、雇用平等の分野に関心を持ち、「男女平等賃金」をテーマに卒業論文を書いた所先生。卒業後は大手企業に勤める中で結婚・出産を経験します。しかし復職後、責任ある仕事を任せてもらえず、女性には男性と同じ機会が与えられないことを痛感しました。その後、一念発起して大学院に入学、子育てをしながら、雇用における性差別や障がい者差別について学びを深めました。

日本の女性労働者の賃金は、フルタイム労働者の場合で比較しても、男性の約7割に留まります。また、妊娠した女性労働者の2人に1人が出産を機に仕事を辞めています。育休を利用して職場に復帰しても、育児と仕事のバランスを考えて、管理職への昇格はあきらめたという女性が多くいます。このように、残業や転勤を引き受けて出世する男性と、育児のために仕事をセーブする女性では、働き方に違いがあり、その違いが賃金額にも現れてくるのです。

格差を解消するためには、「育児と仕事が両立できるようにチームで協力して仕事を効率化し、残業を減らす」「家事育児は男女で分担し、女性の負担を減らす」などが必要だと所先生は指摘します。近年の法制度において、女性活躍推進法や労働時間の上限規制は格差解消のための解決策の一つであると考えられ、「女性が働きやすい職場は、男性や障がい者など誰にとっても働きやすく、職場全体に良い影響が出る」と強調します。

海外の事例を研究して、日本に新しい法律を提案することも法学者の重要な仕事の一つです。所先生は2018年8月から1年間、カナダのトロント大学に客員研究員として滞在予定で、「研究の成果をまとめ、雇用の平等につながる法制度を日本に提案していきたい」と言います。

近年、日本は女性の活躍や働き方改革に力を入れており、所先生の研究に大きな期待が寄せられます。

研究への思いとオフの顔を知る
3つの質問

<研究スイッチ> <研究スイッチ>研究への思いとオフの顔を知る3つの質問

学生への指導で
大切にしていることは何ですか。

Q1 Q.1 学生への指導で大切にしていることは何ですか。

企業での勤務経験を生かし、社会の現場を意識した指導を心掛けています。

A. A.健康増進や運動能力向上につながる運動処方の研究をしています。

7年間の会社員生活で経験した職場におけるリアルな情報を伝えるとともに、現場を重視した指導を心掛けています。例えば夏休みには、ゼミの学生に「チームで仕事の現場を取材する」という課題を出しています。学生たちはハローワークで外国人の採用活動を調べたり、農業を体験したり、石炭産業科学館で炭鉱労働について学ぶなど、実体験を通して「働くこと」について考えます。ゼミ生が卒業時に贈ってくれた寄せ書きやカップなどは、私の宝物です。

研究内容

 
学外での活動などを教えてください。

Q2 Q.2 学外での活動などを教えてください。

福岡県労働委員会の委員として
労使紛争の解決を支援しています。

A. A.「ニコニコペース」による「スロージョギング」の啓蒙活動をしてます。

2015年11月から福岡県労働委員会公益委員を務めています。労働委員会は、労働者と使用者の間に争いが生じた場合、両者の間に入り、公正中立な立場で問題解決をサポートする行政機関です。当事者からの申し立てを受けて、不当労働行為があった場合に救済命令を発するほか、労働争議解決のためにあっせん・調停・仲裁を行います。実際に困っている方の話を聞き、円満に解決するお手伝いをすることに大きなやりがいを感じています。

「スロージョギング」の本

先生の趣味は何ですか?

Q3 Q.3 先生の趣味は何ですか?

法律に興味を持ったきっかけは本。
今も年間100冊の読書を目標にしています。

A. A.研究の成果を自ら実践し、フルマラソンに挑戦。

幼い時から本が好きでした。小学生の時に、自宅の本棚にあった父の法令集を覗き、そこで憲法と出合いました。「われらは、平和を維持し・・圧迫と偏狭を・・永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」という格調高い憲法の前文に惹かれて、法律家を目指しました。年間100冊の読書を目指しており、読んだ本は「ブクログ」というアプリで管理しています。好きな作家は、同じ北海道出身で歌人でもある穂村弘さん。ロマンチックな短歌とゆるいエッセイのギャップが好きです。

フルマラソン

福岡大学学園通信 No.60
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