特集リーダーシップ

誰でも聞いたことがあるこの言葉。多くが必要性を感じるこのチカラ。
私たちは如何にしてこれを身に付け、発揮していったらいいのでしょう。

今回、「リーダーシップ」をテーマに立場と経験の違う4人が座談会を行いました。
本学の卒業生であり、次世代のリーダーを輩出する九州・アジア経営塾出身者でもある隈社長をゲストに、学生二人が加わって約2時間、語ってもらいました。ファシリテーターは、「リーダーシップ」「チーム力」等が専門の池田先生です。

苦しい局面でこそ必要となるのが「リーダーシップ」
失敗、苦境、葛藤の経験、そして勉学が
「人」を磨き、「リーダーシップ」を形づくる

大学のプロジェクトに参加
リーダーシップを実践経験で学ぶ

池田

これから社会に出る皆さんにとって、またグローバル社会で生きる上で、欠かせないキーワードの一つである「リーダーシップ」について考えましょう。今日は、私の研究テーマでもあるリーダーシップについて、企業の経営者である隈社長、それから現役福大生の文系・理系から代表して一人ずつを迎え、意見を交わしていきたいと思います。まずは福岡大学の卒業生でもある隈さんに、リーダーシップの必要性をお聞きします。

企業の経営者として、日頃からリーダーシップを求められています。しかし、経営者ならずとも各ポストで、さらに大学生でもチームやサークル・部活でリーダーシップを求められる場面はあるでしょうね。

池田

そうですね。リーダーシップはトップの人だけに求められるものではないですね。学生の二人は学生生活の中で、リーダーシップの必要性を感じる場面はどんなときでしょうか。

複数人が集まって、何か一つの目標に向かってプロジェクトを進めていくときでしょうか。ゴールは決まっていたとしても、そこに至るまでの進捗過程で作業を細かく振り分けたり、その作業をチェックしたり、さらにみんなを束ねる軸を明確にし、導いていく役割の人がいないと、目的を達成できないような気がします。

法崎

確かにそうです。特にチームが複数あるような大きなプロジェクトだと、全体を把握しているリーダーがいないとスムーズに進みません。また、そのリーダーのキャラクターでチームのムードが変わることもあると思います。

池田
リーダーのキャラクターでチームのムードが変わる。確かにその通りですね。ところで今まで二人はどういうプロジェクトに参加し、どんなリーダーを見てきましたか。

私は3年次の夏休みに東北の被災地を訪れる「東日本復興支援プロジェクト」に参加しました。大きく分けて地域創生班、防災班、精神的なケア班の3つがあり、私は地域創生班に所属していました。グループのリーダーは当然3・4年次生が務めるだろうと思っていましたが、1年次生の男子が立候補したのです。最初は驚きましたが、彼の活躍は目覚ましく、グループメンバーへの説明や情報共有がとても丁寧。学年に関係なく全員が彼を信頼して、それぞれができることに一生懸命に取り組むことができました。「1年次生の彼がこれだけ頑張ってくれているのだから、上級生の私たちも負けてはいられない」と切磋琢磨できる環境になっていきました。私たちのグループは互いのいいところを認め合い、足りないところは補いながら、それぞれが自分自身を高めることができました。これもひとえに情熱を持って引っ張ってくれたリーダーと副リーダー、そしてそれに共鳴して付いていった各メンバーのおかげだと思います。リーダーが達成感を感じると同時にグループ全体も感動を共有できるのが理想的な状態だと感じました。

法崎

1年次生がリーダーを買って出るなんて積極的で素晴らしいですね。私は所属しているゼミで参加した「書籍フェア」というイベントを思い出します。このイベントは商学部の杉本ゼミ主催で、「本を読まない大学生に本の魅力を伝えよう」というコンセプトで2015年の6月から約2カ月、ヘリオス文庫(福岡金文堂福大店)で行いました。杉本先生の基礎ゼミを受講している1年次生に本を選んでもらい、POP(紙で作る広告媒体)の制作までお願いしました。

商学部のゼミ生が書籍フェアで売り場のポスター制作などを手掛けた

約40人の学生が制作したPOPの中から実際に店頭に置くものを選ぶために投票イベントを行うなど時間をかけて準備しました。このプロジェクトでは、杉本先生の意向で最初からリーダーを決めることはしませんでしたが、各役割の中で一人一人がリーダーシップを取り始めたのです。私自身、ポスター制作や売り場の装飾を主に担当しましたが、人前で話す役割を任されることも多く、このパートでは自分がリーダーだという意識を持ちながら活動しました。他のメンバーに任せっきりで自分が動かないリーダーは信頼されません。しかし、一人でやり過ぎてしまうと周りが育たないので、バランスが大切だと感じました。

池田

なるほど、二人とも福岡大学におけるプロジェクトの実践経験で、リーダーシップの重要性や在り方の一端をしっかりと学んでいますね。

リーダーによって組織のムードが一変することも

池田

部活、サークル、会社などの組織では、あらかじめ役割が設定されている場合も多いですね。隈さん、ビジネスの場面においてリーダーシップに関する印象深いエピソードはありますか。

米国とスウェーデンの子会社の社長とミーティング
全体集会で登壇し、中期経営計画の進捗状況について説明

子会社がアメリカ、中国、スウェーデンにあります。かつてスウェーデンでは、ある小さな会社を買収しました。当初は、創業者のスウェーデン人社長が続投していましたが、代替わりのタイミングで、元経営コンサルタントの人物が社長に就任しました。すると、組織の雰囲気が一変したのです。以前は仲間意識が強く、ある意味家族的で「無理せず頑張ろう」という空気でしたが、マネジメントのプロフェッショナルが入った途端、合理性を追求した戦略思考に変わりました。それ以前は一進一退であった利益率が毎年10%程度成長を続け、ついに無借金経営を実現させるまでになったのです。どちらのリーダーシップも間違いではないと思います。0から1をつくる起業の入り口では、「アットホームでみんなが同じ方向を向いている」というスタイルが適しているのかもしれません。しかし、企業である以上、利益を生み続けることは必要不可欠。楽に働けても、利益が生み出せないとその組織は長続きしません。成果が上がれば、一人一人の意識やモチベーションが高まるというメリットもあるでしょう。リーダーは文字通り、導く人。その時、その状況で目指すべきビジョンを示し、論理と熱意を持って引っ張っていかなければなりません。

池田

まさにリーダーによって組織の色がガラリと変わる典型的な実例ですね。初代社長と2代目社長は何が違ったのでしょうか。

指針を示して、実践していくという流れは、基本的に変わりません。ただ初代社長の時代は、例えば、会社にペットの犬を連れてきてもいいというようなアットホームな社風でした。しかし、2代目は「働く場所にはよくない」とルールを変え、組織に人を合わせることで、強固な組織に変えたのです。

池田

組織や集団も人間と同じように成長していくのですね。年月を重ねながら規律や手順を覚え、役割をより明確にしていかなくてはいけない。軌道に乗り始めるとそのいい状態を継続・安定させていくために、時代や社会情勢などの環境の変化に対応していく必要があります。隈さんのスウェーデンの子会社も家族経営に近い創業時から次のステージへと上がるために新しいリーダーが活性剤になったのかもしれませんね。

いいリーダーに求められる資質とは

池田

今、いろいろな具体的事例を挙げて、それぞれの視点からリーダーシップについて話しましたが、リーダーシップに必要な資質は何だと考えますか。

法崎

ゼミやプロジェクト、アルバイト先での出来事を振り返ると、自分の考えを押し付けるのではなく、メンバーの意見や気持ちを引き出せるリーダーは尊敬できます。周囲からの意見や提案を判断材料にして、どう進むべきかというプランを決定する。簡単ではないと思いますが、そんなリーダーの下だと働きがいを感じられるだろうなと思います。

私もそう思います。リーダーには、コミュニケーション力と決断力を持ってほしい。優柔不断だと周りが動揺してしまうので、これから突き進むゴールにきちんと光を当てられる人がいいリーダーだと思います。

池田

なるほど、二人の意見に共通しているのは、周囲の意見に耳を傾けるということですね。ぐいぐい引っ張って、先頭に立つよりは、メンバーにとって身近に感じられることが大切なのですね。「決断力」というキーワードも出ました。カナダの経営学者のH・ミンツバーグは「リーダーとしての階層が上がっていくほどに決断の割合が増えていく」と提唱していますが、隈さんも決断の場面が多いと思います。決断する場面でリーダーとして工夫している点はありますか。

日々の決断の大前提として、組織の中で何を実現したいか、将来どうなりたいかというビジョンを事前に策定しておくことが重要です。経営をしていると、会議室の壁の色、食堂のメニューなどの細かいことから、何億円規模の投資の話まで、大小さまざまな決断を迫られます。大筋のビジョンがしっかりしていれば、さほど時間を掛けずに決断できます。そのためには信念が必要。信念があって、ビジョンが生まれ、そこがしっかりしていれば具体的な事案の決断も速くなります。リーダーとして気を付けていることは、決して傲慢にならないということです。リーダーは人事権や待遇を決める権利を持ちますから、周囲が意見を言いづらくなってしまいがちです。しかし、そうした関係性の中では、正しい情報が入ってきません。人として、周囲が尊敬できる謙虚さや礼儀正しさを失ってはいけないと肝に銘じています。リーダーである前に“lead the self”(リード ザ・セルフ)、自分自身をリードしていかなくてはいけないと思っています。とはいえ、私も学生時代から自身の未来を真剣に考え、どう在りたいかと問い詰めていたわけではありません。社会に出て、組織に属すと、だんだん責任が重くなり、必然的にそうした考えが定まってくるのだと思います。

池田

おっしゃる通り、社会に出てから身に付く部分も大いにありますね。学生の二人は将来目指している夢はありますか。

ガウディが手掛けた建築物に触れ、感銘を受ける平さん

私はまだ漠然としていますが、世界を舞台に働きたいと思っています。大学生活での目標は「興味があることには、悩む前にまずトライする」。1年次の夏休みには夏期セミナー(北海道での研修)に参加し、翌春には個人的に、憧れていたアメリカへ。2年次の夏休みには大学のプログラムを利用してイギリスのニューカッスル大学での語学研修に参加。3週間イギリスに滞在し、英語でのコミュニケーションの難しさを実感しました。そうした経験からEnglish Plaza in Kujunomori(二泊三日の合宿形式の研修)というネーティブの先生と英語だけで会話する英語漬けの研修に参加したり、ガウディの建築を見るためにスペインに赴いたり、オーストラリアに行ったりもしました。いろいろな国際交流の機会に積極的に取り組んでいます。国籍やバックグラウンドの違う人と交流を重ねることでコミュニケーション力が高まり、人の話に耳を傾けるトレーニングにもなっています。

法崎

私もまだ将来の目標は定まっていませんが、大学時代は見識を広げるためにとにかくさまざまなことに挑戦してみようと思って動いています。書籍フェアなどのプロジェクトでは、物を作って、ポスターを見た人が反応してくれることがとてもうれしかったので、誰かの気持ちに影響を与えられるような仕事に興味があります。

二人ともきちんと考えていますね。若いうちは二人のようにいろいろな経験をして、可能性や考え方を広げておくことが大事ですね。時に自分の未熟さを知ることもあるでしょうが、そうして弱みを理解することや悩むこともいい経験です。社会に出ても同じことです。プロとして報酬を得るからには社会に貢献しなくてはいけません。学生時代とは違って、失敗すると苦境に立たされることもあります。しかし、ぶつかったり、責められたりして、壁を乗り越えながら人として成長していくのです。いいことも悪いことも経験が自分の信念を作っていきます。毎日同じ教室で同じ人とだけ顔を合わせているとどうしても視野が広がらず、考え方が固まりがちです。引き出しが多ければ多いほど、柔軟性が増し、人としての厚みも増します。失敗、苦境、葛藤、どれも糧になりますよ。リーダーシップが一番必要とされるのは順調なときではなく、苦しい局面ですから。

池田

失敗を怖がってはいけませんね。リーダーシップは、「経験7割、薫陶2割、研修1割」によって身に付くと言われています。年代やバックグラウンドが違う人同士でコミュニケーションを行うときは、共通の話題を探したり、お互いのことを知り合ったり、予想できない展開が待っています。自分が考えていることが誰にとっても当たり前ではないことを知るいいチャンスです。隈さんの言葉で印象的なのが「リーダーである前に人として」というお話です。謙虚さや礼儀正しさを忘れないというのは大事ですが簡単ではないでしょうね。

ポイントは多様化です。これまでの日本は男性中心の画一化された社会でした。その既成概念は崩壊しつつあります。女性や外国人が同じ現場で活躍している環境はもはや当たり前です。彼らのモチベーションを上げることは企業の命題の一つかもしれません。また55歳以上のベテランに目を向けることも大事です。企業はつい若手の研修に力を入れがちですが、全ての社員に退職するその日まで生き生きと働いてもらうことが会社にとっての原動力になります。

池田

人は期待されたら頑張ろうと思えるし、結果が出て評価されたらうれしいはず。年齢性別問わず誰しも承認欲求を持っていますから。では隈さん、最後に福岡大学で学んだ経験からリーダーシップを身に付けるために学生時代にやっておくべきことなどアドバイスをいただけますか。

私自身は社会に出てから、また特定非営利活動法人 九州・アジア経営塾の第1期生として社外の志の高い仲間と学んだことから痛感しましたが、経験が不足している若いうちにこそ必死で勉強しておくべきです。社会に出ても日々の商談や何げない周囲の会話から学べますが、学生時代は読書が大切。自分の足りないところを知り、それを補うために先人の知恵が詰まった本を読むのです。私は会社の中に図書コーナーを作って800冊ほど社員に読んでほしい本を置いています。読書はそれほどお金も掛からないし、社会に出てからも財産になりますよ。

池田

なるほど、自分が至らないところがあるという自覚から始まり、学ぶ姿勢が大切ですね。日本経済新聞で報道されたように、福岡大学は大学別ランキングのコミュニケーション項目で全国1位を獲得しています。在学生約2万人の総合大学で、文系理系合わせて9学部31学科があり、各国からの留学生がいます。ゼミや学科ごとの活動の他に、企業と手を取り合う社会活動も充実しています。成長のチャンスにこれだけ恵まれた大学も珍しいでしょう。社会に出ると、日々の仕事が第一優先になるので純粋に自分の成長のための時間が取れたとしても細切れになりがちです。大学時代は自由な時間が多く、今だからこそできることがたくさんあります。大きなプロジェクトに参加するもよし、海外に留学するもよし、インターンシップに参加するもよし、もちろん、専門分野の勉強に打ち込むもよし。積極的に、自らさまざまなことを学び、貴重な経験を積み重ねて、自分流のリーダーシップを磨いてください。

アンケート結果から見る
福大生の“リーダーシップ”観

「リーダーシップ」について本学学生にアンケートを行いました。その結果を座談会のファシリテーターを務めた池田先生が分析しました。

リーダーシップに対するイメージは、「協調性、まとめる力、コミュニケーション力」と答えた学生が最も多くいました。リーダーシップといえば「『引っ張っていく力』や『積極性』をイメージする人が多いのでは」と予想していましたが、チームワークやコミュニケーションを重視していることが分かりました。

アンケート結果から見えるのは、カリスマ性があり、みんなを強い力で統率していくタイプではなく、メンバー一人一人の意見や成長度合いを見て、話を聞き入れながら前に進めるようなリーダーを求めているようです。

また、「リーダーに必要な要素」については、「謙虚さ」「メンバーと同じ視線」という意見が印象的でした。多様化の進展を背景にしてか、メンバーを下から支える「サーバント・リーダーシップ」が信頼関係を築いていく上で有効なリーダーシップ力といえそうです。

調査概要
  • ・調査期間:2015年10月23日(金)~11月6日(金)
  • ・調査対象:本学学生
  • ・有効回答数:204人
あなたが感じるリーダーシップのイメージを教えてください。
順位 回答数 カテゴリー 代表的な回答内容
1位 75人 協調性/まとめる力/
コミュニケーション力
  • ・みんなを取りまとめる
  • ・みんなの意見を聞きながら上手に進めていける
2位 72人 引っ張っていく力/積極性
  • ・自ら率先してみんなを引っ張っていく
  • ・集団を目標へと導く
  • ・みんなの先頭に立ち引っ張っていく存在
3位 16人 責任感
  • ・責任感が強い
4位 12人 信頼性
  • ・頼れる存在
  • ・周りから認められている
自分がリーダーシップを発揮して成し遂げた経験を教えてください。
円グラフ
  • 部活/サークル
  • 文化祭/体育祭
  • ゼミ/授業
  • アルバイト
  • その他

リーダーシップ観の違い

●トップダウン・リーダーシップ
(従来の「リーダーシップ観」)
  • ・英雄型
  • ・トップダウン
  • ・上意下達
  • ・指示・命令
●サーバント・リーダーシップ
 (新しい「リーダーシップ観」)
  • ・奉仕する
  • ・下から支える
  • ・尽くす
  • ・自己犠牲
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