福岡大学学園通信 No64
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「医学の世界は、教科書に書いてあることが絶対ではない」と述べる山本先生。「これまでの知見を理解した上で、何かおかしいと感じたら常識を疑ってみることも必要」だと強調します。例えば2017年、難病である特発性の大腿骨頭壊死を疑われた60代の女性が来院しました。診察に当たった山本先生は、症状や画像などに加えて、60代という年齢が一般的な発症年齢より高く、危険因子がないことに違和感を抱きました。そこで詳細に調べたところ、骨の壊死ではなく小さな骨折であると判明。手術をすることなく回復に至りました。常識を疑い、行動に移した結果、患者さんにとって最善の医療を提供できた好例といえます。“おかしい”と感じた点をしっかりと突き詰めることで得られた発見をノーベル賞に例え、「スタッフ一人一人が小さなノーベル賞を積み重ねてほしい」と語ります。え し「常識を疑う姿勢を大切に」 1972年開設。脊椎を含む全ての運動器の疾患を対象として診療。専門分野は、全身の関節(肩、肘、手、股、膝、足)、脊椎、関節リウマチ、腫瘍、骨粗しょう症、外傷、小児整形、スポーツ医学など多岐にわたる。病床数は70床。福岡大学病院 整形外科手術前後に全スタッフで行うカンファレンスリハビリテーション部とも密な連携感染対策のため手術時には医療用ヘルメットを着用28FUKUOKA UNIVERSITY MAGAZINE January 2019Close-upて取り組んでいます。スポーツ界でも関節痛やスポーツ外傷などに対する早期予防・治療の意識が高まるなど、整形外科医に期待される役割は年々大きくなっています。 2016年に教授に就任した山本先生は、「思いやり」「整形外科のプロたれ」「正直たれ」の3つを科訓に掲げます。患者さんやご家族はもちろん、スタッフも含めた全ての人に思いやりの気持ちを持つこと。経験に基づいた高い臨床力で的確に治療すること。正直な姿勢で臨床や研究に臨むこと。「この3つを備えた、良質な整形外科医の育成を図っていきたい」と話します。 整形外科医としてのやりがいについて「ケガが治ったり痛みがなくなったりして元気に帰ってもらうこと」と語る山本先生。「スポーツ選手が復帰して活躍する姿や、長く痛みに耐えた患者さんの痛みから解放された笑顔を見る時は、この仕事に就いて本当に良かったと思います」。

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