福岡大学学園通信 No64
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25FUKUOKA UNIVERSITY MAGAZINE January 2019数字やデータなどに基づいて論理的な関係性や裏付けを明確にし、そこから考えを展開していく思考は一般的に「理系的」と言われます。一方で、事象にさまざまな要素を推定して加味し、バランスを踏まえて総合的に結論を導き出そうとする思考は「文系的」とされます。杉万研究室では双方の考え方を融合させることで、現実社会の課題に柔軟に対応できる人材の育成を目指しています。研究室では、課題を分析する手段として数学を学びますが、現実社会の問題は複雑な要素が絡み合うため理論だけでは解決できません。また、数理モデルや統計といった「道具」の使い方を学ぶだけでは、これらの「道具」を実践的に使いこなすことができません。つまり、「数学の理論や分析方法だけを学んでいても、現実社会の諸問題に対応するのは難しい」と先生は話します。しかしそこに、さまざまな可能性を想定し、いろいろな角度からアプローチしようとする発想が加われば、これらの「道具」を実践的に使いこなせるようになります。そうなると、数学などの知識を、現実社会で活用できる「スキル」に昇華させることができます。「学んだ理論をベースに、課題解決につながる提案ができる人材を育てていきたい」と先生の言葉にも力が入ります。学んだ知識を「スキル」として活用する力を身に付けるKey Word文理融合杉万研究室理学部社会数理・情報インスティテュートこの授業のポイント杉万 郁夫 准教授理学部応用数学科学問は、現実社会で役立つものでなければなりません。そして知識や技術を教えるだけでなく、社会で活用できるところまで導くのが教育と考えています。人工知能(AI)など情報通信技術の発達による産業構造や働き方の変化を背景に、社会で通用する発想力・創造力を育む教育の重要性は今後さらに注目されてくると思います。そのためには、文系と理系を融合させることが重要です。研究室(社会数理・情報インスティテュート)に文系理系問わず受け入れているのも、こうした理由です。研究室で学生たちは、数理モデルを使って社会のさまざまな課題の解決方法を考える習慣を身に付けていきます。そのため発想の幅が広がるだけでなく社会問題にも関心を持つようになり、問題意識の高さにつながっています。「文系」「理系」双方の思考プロセスを修得し、現実社会における課題解決能力を高めるおもしろゼミ 研究室探訪&学生生活文部科学省の「Society 5.0に向けた人材育成に係る大臣懇親会」(2018年6月)でも「文理分断からの脱却」「文理両方を学ぶ高大接続改革」などが議論されており、“文理融合”は教育界におけるキーワードの1つとして注目されています。

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