福岡大学学園通信 No64
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16FUKUOKA UNIVERSITY MAGAZINE January 2019ガをしてからは、バトンができることが楽しくてたまらなくなったのです」 バトンを始めた頃の気持ちを思い出したかのような新鮮な気持ちで、演技に向かうことができるようになった中村さんは、ケガから1年半後の2015年末に、所属するバトンスタジオの40周年リサイタルにキャストの一人として出演、完全復活を果たします。 そして2018年、4年越しの世界大会出場。「4年前のフリースタイルの演技では『白鳥』を踊る予定でしたが、今回は『黒鳥』を選びました。あの時にはなかった〝絶対に大会に出るぞ〞という強い思いを白鳥から王子を奪おうとする黒鳥の姿に重ね、この4年間の激しい感情をぶつけるように表現しました」。指先まで神経の行き届いた繊細で力強い黒鳥の羽ばたきは、審査員をも魅了しました。 「選手生活の中で最も納得できた演技でした。神様がここまで続けなさいと言っていたのかもしれません」 世界大会を最後に、第一線の選手生活から引退した中村さん。今は、2019年4月に行われるショーへの出演を集大成と位置付けて練習しています。 「これからの大きな目標はバトンの認知度を上げることです。技術、難易度共に上がっている中で、日本選手の実力は世界トップレベルですが、バトン自体はマイナー競技。選手たちは練習費や遠征費を全て自己負担しながら活動しています。今まで自分のことだけを考えてきましたが、これからは後輩トワラーがもっと世界で活躍できるように、バトンの素晴らしさを伝えていきたい。そのためにも私自身がバトンを広い視野で見られるよう、いろいろな経験を積む必要があると思っています」 練習に打ち込む自分の背中を押してくれた友人たちと出会えた学生時代があったからこそ、「夢を追い掛けながら頑張ろうと思えた」と語る中村さんに、後輩へのメッセージをお願いしました。 「何気なく過ごす日々の中でも、何か一つ目標を見つけてみてください。小さな目標を立てることで、小さな達成感を得られます。それが積み重なれば、大きな自信につながります」 目標に向かって行動し続けることで周りの共感を得、追い風に変えてきた中村さんの競技人生。「言葉で表現するのは昔から苦手なんです。私にとってバトンは唯一、自分の気持ちを素直に表現できるもの。もはや、なくてはならない存在ですね」。  そう言って、微笑みました。疾走の軌跡~写真で振り返る、あの日・あの時~小学1年生で出場した関西バトントワーリング選手権大会(1993年)第41回全日本バトントワ-リング選手権大会(2016年)での演技ケガで入院したイギリスの病院で卒業式でゼミ担当の姜文源先生とバトンスタジオの長沢裕美子先生と(2007年・カナダ)バトンの認知度向上を目指し、次のステージへ

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