福岡大学学園通信 No64
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14FUKUOKA UNIVERSITY MAGAZINE January 2019魔法使いのような銀色のバトンに憧れて 福岡市内のバトンスタジオで練習に打ち込む子どもたちの中に、銀色のバトンを手に練習に励む女性の姿がありました。背筋をピンと伸ばし、まるで体の一部のようにバトンをくるくると自在に操る彼女は、バトントワラーの中村麻美さん。パッと周りを照らすような明るい笑顔で迎えてくれました。 バトンというと、パレードの先頭での演技をイメージするかもしれませんが、そうしたショーでの演技の他に世界を舞台とした競技もあります。バトンを高く投げたり、体の一部に乗せて転がしたりする高度な技術に、体操の動きも組み入れ、音楽に合わせて踊る豊かな表現が魅力的な競技です。 2018年8月、中村さんはアメリカで開催された世界バトントワーリング選手権大会に日本代表として出場。世界16カ国・30人の出場者の中で4位という成績を納め、「ずっと夢だったバトントワーリング最高峰の大会で、これまでで最高の演技ができました」と振り返ります。 体を動かすのが好きだった中村さんとバトンとの出合いは4歳の時。幼稚園の先生の勧めで見学に行ったスポーツクラブで、「お姉さんたちが銀色の棒をくるくると回す姿が、魔法使いのように見えて憧れました」。 他の生徒たちと同様に、小さなバトンを片手で回すことから始めた中村さん。最初はバトンが体に当たり、アザだらけになったそうです。それでも週1回のレッスンは楽しく、程なく大会出場を目指すコースに誘われ、約30年に及ぶ選手生活がスタートします。 高校では吹奏楽部に入り、ドラムメジャーを務め、さらにバトンも披露するなど、表現の楽しさにのめり込んでいきます。2005年には全日本バトントワーリング選手権大会のソロストラット部門で、高校生ながら大学生・一般部門のメンバーも含めた1位である「グランドチャンピオン」に輝きました。この時初めて、それまでは夢だった「世界」が、目標として見えてきました。 そんな中村さんが選んだ進学先が、福岡大学でした。卒業生である父から大学の話を聞き身近に感じていたことや、福大に通いながらバトンの練習をしている先輩の姿も後押しとなり入学。「私はもともと人見知りの性格でした。総合大学でさまざまな人と触れ合うことは、世界を目指す上でも必ずプラスになると思いました」。 授業とバトンを両立する学生生活に息をつく暇はありませんでした。朝はアルバイト、大学で授業を受けた後、夜はスタジオで約3時間の練習。授業についていくのに苦労しましたが、空き時間があれば図書館に行き授業の課題や試験勉強に集中して取り組みました。 「時間を無駄にせず、有意義に学びたいという思いは、ゼミに在籍していた勉強熱心な中国人留学生の友人に影響されたと思います。私もしっかり両立して頑張ろうと力をもらいました」 大会で授業に出席できない時は、友人がノートを取るなど協力してくれました。大きなバトンケースを背負いキャンパスを歩いていると、「今日も大荷物だね、頑張れ」と、声を掛けてくれる人がいて、その声が大きな励みになったと言います。 忙しくも充実した日々。練習では毎日の課題を設定しながら着実にスキルを高めていきました。そして4年次生の2008年、WBTFインターナショナル大会でソロトワールアダルト部門1位を獲得。世界の頂点に立ち、「バトンで生きていく」と思いが固まります。2014年には、念願の世界バトントワーリング選手権大会の日本代表選手に選出されますが、思いもかけない試練が立ちはだかったのは、その直後のことでした。さまざまな人との触れ合いが競技にも生きると福大へ進学

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