福岡大学学園通信 No63
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35FUKUOKA UNIVERSITY MAGAZINE October 2018 学校法人福岡大学の平成29年度決算は、5月31日開催の理事会および評議員会で承認されました。それに先立ち、平成30年2月20日、21日、23日、3月1日、9日、13日および4月17日の計7日、加えて平成30年5月7日から11日までの5日間、学校法人福岡大学監事による監査が行われました。監査の結果、学校法人福岡大学の業務に関する決定および執行は適切であり、学校会計の計算書類、すなわち、資金収支計算書、事業活動収支計算書、貸借対照表および附属明細書(固定資産明細表、借入金明細表および基本金明細表を含む。)ならびに財産目録、収益事業会計の合併損益計算書、合併貸借対照表ならびに財産目録は、会計帳簿の記載と合致し、その収支および財産の状況を正しく示しており、業務または財産に関する不正の行為、または、法令もしくは寄附行為に違反する重大な事実はないものと認められました。18歳人口の減少、大学数の増大、入学定員超過率の厳格化など、今後の日本における大学経営を巡る環境はより厳しさを増していきます。しかしながら、どんなに厳しい状況に直面しようとも、在学生やご父母、卒業生や地域社会といったステークホルダーの方々の期待にしん し真摯に応えていかなければなりません。そこで本学は、大学運営の基礎となる財政の安定強化を図っていく必要があります。教育・研究・医療のさらなる充実のために、限られた経営資源を選択と集中により有効に投じ、アクティブ福岡大学のより一層の実現に向けて前進していかなければなりません。関係者各位のご理解とご協力をよろしくお願いします。アクティブ福岡大学のより一層の実現に向けて平成29年度 学校法人福岡大学収支決算学校法人福岡大学の一年が数字で如実に表現された決算。それは、今後の課題のインジケーターであり将来ビジョンへの道標でもあります。中川常務理事が、平成29年度の監査報告について説明します。学校法人福岡大学常務理事(財政担当副学長)中川 誠士▶ 学校法人福岡大学監事からの報告および要望教育・研究・医療のさらなる充実のために、限られた経営資源を「選択と集中」により有効に投じる特殊要因を除いた基本金組入前当年度収支差額は、平成27年度8億円、平成28年度3億円、平成29年度9億円と平成27年度並みに回復している。減価償却額を加えたキャッシュフロー創出力は、平成27年度72億円、平成28年度69億円、平成29年度75億円と改善している。減価償却は66億円と前年度並みだが、今後の大型投資を踏まえると償却負担増が見込まれるため、キャッシュフローの推移を注視する必要がある。(1)ガバナンス体制ア.決定(決裁)権限の明確化 (権限と責任を明確化し明示することにより、迅速で整斉とした業務執行が行えるとともに、ガバナンスの観点からも重要)①学内規則の階層構造に対応した、規則等の「制定・改廃」権限の明確化②決定(決裁)および報告受領に係る権限明確化(理事会規則、稟議等決定基準および報告基準の制定)③決定(決裁)と報告の峻別④決定(決裁)証跡の明示(決定(決裁)権限を明確化し、その証跡を残す)⑤業務執行の定例報告(理事会、大学協議会等の会議体への付議事項を、決定事項と報告事項に分け学内規則に明示。報告事項は報告サイクル・報告部署・報告者を定め報告を義務付ける)⑥理事会機能のより実質化・実効性の確保(理事会付議基準を制定し、理事会で決めるべきこと、報告を受けることを明確化、適切な判断ができる資料の提供や説明等)イ.常勤監事の設置(2)組織および人事①組織の統廃合(単位職場の拡大、組織のスリム化)②事務職員の専門性確保(病院・施設・システム関連の事務職員の人材確保の観点から、採用・給与体系・異動・処遇等に関し新たな制度等を検討)(3)不動産投資およびシステム投資①中期投資計画(3~5年)の策定および実施状況の報告 (中期的な経営環境や損益見込みを踏まえた中期投資計画の策定、計画の実施状況・投資効果を理事会等に定期報告し検証する仕組み、案件の取り組みは、案件ごとの収支計画(投資額・調達方法等を含む)と法人全体の損益への影響を明示した上で、理事会で協議・決議)②所有不動産の有効活用の検討(将来的な有効活用等に係るグランドデザインの協議(必要に応じ売却も含め検討、収益事業としての活用の可能性も含め検討))(4)その他①博多駅クリニックの梃入れによる安定運営化と位置付けの再確認 (クリニックの役割・位置付け・組織の在り方を整理し直し、早期の安定運営を図る)②緊急事態への体制整備 (緊急事態の定期的な訓練、災害時対応マニュアルの整備、BCP体制の構築の検討、情報セキュリティ対策の強化(情報管理、サイバーセキュリティ等)、不審メールの訓練等)③時間管理の徹底ならびに長時間労働の縮減 (全学的な不断の取り組み、医師の労働改善に向けた取り組み)④働き方改革への取り組み (各部署における業務の効率化・削減の検討、ペーパーレス化等の検討(例示:起案書の電子化))(1)法人全体の決算事業活動収支差額比率・人件費比率・経常収支差額比率・教育活動収支差額比率は、事業活動収支差額比率を除き改善しているが、全国32大学法人平均の財務比率と比較すると大きく劣後している。教育活動収支・財務収支をいかに改善するかが課題であり、今後、大幅な収入増が期待できないとすると、全学的な経費削減に改めて取り組む必要がある。また、他大学に比べ高い人件費比率が、本学経営上の大きな課題であり、全学的な総人件費抑制策を具体的に検討する必要がある。(2)メディカル部門の決算法人全体の経常収入の約5割を医療収入が占めており、福岡大学病院・筑紫病院・博多駅クリニックの収支差額が法人全体の損益に大きく影響する。この3部門の基本金組入前当年度収支差額は、福岡大学病院の医療収入の増加等が寄与し、前年度に比べ13億円改善しているが、依然として赤字状態である。病床稼働率の向上などによる医療収入の増加に引続き取り組んでもらうが、稼働率向上による医療収入の増加には限界があることから、平成30年4月に開院した西新病院を含め、「3病院+1クリニック」のメディカル部門全体としての規模の利益を生かした経費削減を検討し取り組む必要がある。具体例として、業務委託先の集約化、医療機器・医療材料の共同購入、医療システム(電子カルテ等)共同化などが考えられる。また、福岡大学病院の建て替えも予定されていることから、経費削減策を織り込んだメディカル部門全体の中長期計画の立案が必要である。1.「キャッシュフロー創出力」の動向2.提言・助言3.平成29年度決算を踏まえての所見

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