福岡大学学園通信 No63
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医療情報〝患者さん中心の看護〞を目指し地域一体となった人材育成を主導地域医療連携の推進を背景に看護部で独自の取り組み競合からパートナーという存在へ近隣の病院と研修会を開始看護師がつながることで地域医療が円滑に 1985年に福岡大学で2番目の大学病院として福岡県筑紫野市に開設された福岡大学筑紫病院。2004年に福岡徳洲会病院(春日市)と共に筑紫医療圏(筑紫野・太宰府・大野城・春日・那珂川各市)の小児救急医療の輪番体制を構築し、夜間であっても小児救急患者に対応するようにしたことが地域医療連携への転機となりました。2005年の救急告示病院認定でさらに地域との関わりを深め、翌年には地域医療支援センターを開設。2007年には地域の人々の命や生活を守る大学病院として、全国初の地域医療支援病院の認可を受けました。 高齢化社会の到来で社会保障制度は見直され、医療や病院の在り方も変わりつつあります。患者さんは病状に応じて、大学病院などで高度先進医療を受けた後は自宅近くの中小病院への転院や自宅での訪問看護に移行する「地域医療」が推進されており、筑紫病院の地域医療連携の動きもこの流れに沿ったものです。 患者さんを地域全体で支えるという理念は共有できても〝競合〞の意識が働く病院同士が実際に手を組むのは難しいものです。しかし現場で患者さんに接する中で、より深い地域連携が必要だと感じた筑紫病院看護部の看護師たちは行動を起こしました。 「患者さんやそのご家族のことを考えた時、地域全体で看護の質を高めることが必要だと思いました」と、久保伸子副看護部長は当時の思いを語ります。大学病院が培ってきた教育システム、知識、情報を地域の医療機関でも活用してもらおうと勉強会を企画。久保副看護部長らが近隣の病院に出向き、趣旨を説明して回りました。 「地域一体となって人材育成に取り組みましょうという提案に、他の病院の看護部長さんたちも賛同していただきました」。どの病院の看護師たちも看護技術や人材育成に対する悩みや不安があり、それを解消する手立てを見つけられずにいたのです。 2012年、筑紫医療圏の4病院を幹事病院とする「ちくし学び舎ネットワーク」が発足。年1回の研究発表会のほか、研修会も年に2回開催。グループワークも交えながら課題に対する解決方法を話し合っています。3年前からは皮膚・排泄ケアの研修会もスタート。看護師のほか介護士も参加するなど、施設や職種の垣根を越えた活動は地域医療の大きな力になっています。 地域の看護師たちが顔を合わせて看護について学ぶ研修会を通じて、看護師たちの意識も変わってきました。急性期病院(主に急性疾患や重症患者の治療を行う)から別の医療施設、さらに自宅での看護へ移行した患者さんの症例を発表会で知った看護師か人の生命に寄り添い、病気の治療と予防に立ち向かう福大医療と医療人のレポートヒポクラテスの系譜Medical Report樋口 靖子さん看護部長大村 久美子さん看護師長福本 洋美さん副看護部長27FUKUOKA UNIVERSITY MAGAZINE October 2018

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