福岡大学学園通信 No63
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10FUKUOKA UNIVERSITY MAGAZINE October 2018無線などに代表される「ワイヤレスセンサネットワーク」を用いたシステム設計・開発をテーマに卒業研究に取り組んでいる大橋研究室。重視するのはICT(情報通信技術)に関する知識やスキルではなく“自分の頭で考える力”や“本質を捉える洞察力”を磨くことです。「変化の著しいICT分野であっても、今ある技術やサービスの兆しは、10年前にはすでに存在していたもの。そこにいち早く気付き、未来を予測することが大切」と説く大橋先生。そのために研究室の活動で取り入れているのが「バックキャスト」。未来にしかないものであってもその“芽”は今あると考え、何をすべきか探っていく手法です。大橋研究室の夏合宿ではこの手法を用い、学生たちはさまざまな手段を使って集めた「気になる情報」をもとに、未来についての考察を行います。インターネットなど外からの情報を一切遮断し、持ち寄った情報から自分たちのアタマだけで考えていきます。「ポイントは、何も思い浮かばなくなってからが勝負で、“これでもか”と乾いた雑巾を絞るように考えを出していくこと。そうすることで、かなり正確な予測に近づいていく」と言います。こうした発想、仮説に基づいてシステム開発に取り組むことで、卒業研究が“与えられたもの”ではなく“自分のもの”となります。未来予測、仮説をもとにシステム設計・開発に取り組むKey Wordバックキャスト卒業論文(大橋研究室)工学部電子情報工学科/専門教育科目未来を予測する際に、あるべき姿や目標となるような状態を想定し、そこを起点として今何をすべきかを考える思考法。環境問題や企業経営などの長期ビジョン策定においても活用されている。この授業のポイント大橋 正良 教授工学部電子情報工学科インターネット上にはICTに関する多くの情報が溢れています。しかし、そうした情報を書き込んでいる人も、その情報をもとに「モノづくり」まで経験しているケースは少ないのが実状です。そこで私の研究室では、実際にシステムを設計し、動かすところまでを実践しています。開発の過程においては想定外の部品仕様、電源確保などさまざまな問題が発生します。課題に直面したときに自分で調べ、考え、解決する。こうした経験は社会に出てからも実務上のスキルとして役立つはずです。卒業研究はこれまでの学問の集大成。単に与えられたものをこなすのではなく自主性を発揮することが必要で、そのためにも意識付けが重要です。“乾いた雑巾を絞るように”考え出すことで、物事の本質を捉える洞察力を磨くおもしろゼミ 研究室探訪&

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