福岡大学学園通信 No61
27/44

02040608010012020406080100水の硬度※2[ppm CaCO3](濃い味→)(←薄い味)薄い・粉っぽい・平坦な薄い・鋭い・酸っぱい濃い・粉っぽい・平坦な濃い・ぼやけた・酸っぱいアルカリ度※1﹇ppm CaCO3﹈(↑粉っぽい)(酸っぱい↓)120140160180200味の好みには個人差がありますので、「おいしいコーヒー」を定義するのは難しいのですが〝豆本来の味を引き出すためにはどうすればよいか〞については、科学的に説明できます。まず、豆の成分を抽出する水の適性に関しては、ヨーロッパスペシャルティコーヒー協会(SCAE)が成分を分析し、公表している「ウォーターチャート」が一つの目安となります(図)。 硬度はカルシウムイオンなど、アルカリ度は炭酸イオンなどの成分量で決まる値で、それぞれ一定の値の成分を持つ水がコーヒーの抽出に適していると言われています。福岡市の水道水の硬度を調べてみると、この枠内に入っており、少なくとも硬度からはコーヒーに適した水と言えます。コーヒー豆に注ぐお湯の温度も重要です。適切な温度は豆の種類や焙煎の度合いによっても変わってきますが、何人かのバリスタ(コーヒーを淹れる職人)にヒアリングしたところ、85℃前後という人が多いようです。お湯を注ぐと最初にコーヒー豆から「酸味」が、次にコクにつながる「苦み」が抽出され、最後にあ灰 く汁に該当する「えぐみ」が出てきます。温度が高いほど物質は溶けやすくなるため、あまり熱過ぎると「えぐみ」の成分まで多く出てしまいます。逆に、温度が低いとコクに当たる「苦み」の成分が出にくくなります。水出しコーヒーを考えるとイメージしやすいのですが、さっぱりしている反面、「苦み」が少なく物足りないのはそのためです。成分として「酸味」「苦み」「えぐみ」があり、お湯の温度で抽出する成分を調整できることを知っていれば、コーヒーの楽しみ方も広がってきます。リラックスタイムや勉強時の眠気覚ましなどで、身近な飲み物として親しまれているコーヒー。その味は豆の種類だけでなく、使う水の成分や注ぐお湯の温度、使用するフィルターの素材、抽出時間など、さまざまな要素によって変わると言われます。今回は「使用する水の成分」「注ぐお湯の温度」という2つ観点から、おいしいコーヒーの淹れ方を紹介します。〝おいしいコーヒー〟には、科学的な理由がある!教えてくれたのは理学部化学科渡辺 啓介助教福岡市の水道水はコーヒーに適した硬度注ぐお湯の温度もポイント熱過ぎると「えぐみ」を感じる博士(理学)。研究分野は物理化学。出典:THE SCAE WATER CHART MEASURE AIM TREAT(図)26FUKUOKA UNIVERSITY MAGAZINE April 2018福岡大学Coffee Labは〝コーヒーを科学しよう〞をコンセプトに2017年4月に渡辺助教が始めたコーヒー研究所です。「Fusuku Coffee」(福岡市中央区谷)の協力を受けながら、長期休暇中を除き週に一度、9号館別館にある研究室やゼミ室で開催。毎回数人〜10人程度の学生・先生が参加しています。昨年のオープンキャンパスでも休憩所を兼ねて開設し、多くの高校生が訪れました。活動日にはバリスタを迎えることもあり、使用する水やその温度、豆の種類など、さまざまな切り口からコーヒーについて研究しています。2年目を迎える今年度は、これまで蓄積したデータや科学的な視点・発想も取り入れながら、さらに研究を進めていく予定です。「福岡大学Coffee Lab」理学部化学科発のコーヒー研究所リラックスしながら多くの人が交流できる場として学部学科を問わず広く開放されているCoee Lab。開催日程はTwitter(@FuCoeeLab)で随時発信されています。※1 炭酸イオンと炭酸水素イオンの総和をCaCO3の質量に換算した値※2 カルシウムイオンとマグネシウムイオンの総和をCaCO3の質量に換算した値SCAEの推奨する〝水のコアゾーン〟SCAAの推奨する領域D.CollonnaとHendenの推奨する領域Good Life     サポート

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る