福岡大学学園通信 No60
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1呼吸器疾患の内訳。入院患者の5割以上が肺がん、その次に感染症や拘束性換気障害などが続きます。外来では気管支喘息が多くを占めます 2「基礎研究で非結核性抗酸菌症やCOPDの治癒に関与する物質を見いだしており、今後はその臨床試験も進めていきたい」と藤田先生 3呼吸器内科では週6日、カンファレンス(会議)を開いており、問題症例や治療方針について情報を共有しています。このほか各診療科と合同で、疾患群別カンファレンスを月1回、肺がんカンファレンスを週1回、行っています 4呼吸器内科のスタッフ。普段からコミュニケーションを密にとりながら、日々の研究や診察に当たっています呼吸器内科における気管支内視鏡医療 本科では、気管支内視鏡を使った診療にも力を入れており、重症喘息に対する新しい治療法「気管支サーモプラスティ療法」を導入しました。これは内視鏡で喘息患者の気管支壁を熱する事により構造異常を改善させ、病態を改善させるもので、2017年10月に本科で初めて治療を行いました。また、間質性肺炎や肺がんの組織を取る際に、組織を凍結させて検査に必要な量を採取する機器「クライオバイオプシー」も、近日中に導入を予定しています。ほかにもCOPD改善に寄与する機器の活用も治験レベルで進めており、数年後には実用可能となる予定です。診療各科や外部機関と連携し幅広い疾患に対応併発することが多い呼吸器疾患。呼吸器内科医師には、そうした複雑な状況にも、迅速・適切に対応できる力が求められています。それには、呼吸器領域に関する幅広い知識を身に付け、多くの臨床研究を経験することが必要になります。 藤田先生は、「これまで呼吸器内科では初代の吉田教授がCOPD、前任の渡辺教授が間質性肺炎を専門としてこられました。私は感染症が専門です。こうした幅広い専門領域の研究・教育の蓄積が、広い視野を持って診察ができる医師の育成につながっています」と語ります。 大学病院ならではの診療各科との連携も、本科の強みの一つです。本病院には多くの診療科が併設されているため、全身に関連する症状やリスクの高い治療について早急に対応することができます。 肺がんの場合は、呼吸器外科や放射線科、病理部、がん化学療法看護認定看護師などと共同で治療にあたります。また、肺移植などの高度医療も実施することが可能です。 一方、患者数の増加に伴い、外部機関との連携も重要となっています。近年、福岡市城南区・早良区・西区の開業医を中心とした医療施設との勉強会を立ち上げました。また、疾患に関する登録システムを構築して、各施設に本科から医師を派遣する体制づくりを進めるなど、福岡市南西部、糸島地区を中心とした地域医療ネットワークを強化しています。 WHO(世界保健機関)によれば、2020年には死因の10位以内に、肺がんなどの「悪性新生物」、肺炎などの「呼吸器感染症」、COPDなど「閉塞性呼吸器疾患」、これに「結核」を加えた呼吸器領域の疾患が4つ入ると推測されています。藤田先生も現場で、これらの疾患者数が増えていることを実感しています。 さらに、誤嚥性肺炎など高齢者の方が避けて通れない病気も多くなっています。また、藤田先生が研究している「非結核性抗酸菌症」の患者数は千人に一人の割合で存在しているとされ、間質性肺炎など治療法が確立されていないものや、治療そのものが難しい疾患も多く存在しています。こうした難治性疾患や呼吸器疾患の増加を受け、呼吸器内科の役割は、ますます大きくなっています。 「呼吸器疾患で寝たきりになる患者さんも多いので、疾病予防の啓発活動や早期発見に力を入れ、患者さんが希望する暮らしを営めるようにサポートしていきたいと思います。難治性疾患に対しては基礎研究・臨床研究を進め、治療法の開発に邁進していきます」 担う役割の大きさに、藤田先生の言葉にも力が入ります。Close-up321呼吸器疾患の増加予測で呼吸器内科の役割も大きく28FUKUOKA UNIVERSITY MAGAZINE January 2018ご えんまい しんぜん そく診療実績(入院患者)50%肺がん11%呼吸器感染症10%間質性肺疾患5%気管支喘息・COPD18%睡眠時無呼吸症候群6%その他

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