福岡大学学園通信 No60
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想定と断絶時の対応」、建築学科の髙山峯夫先生が「過去の大震災や風水害からの教訓」について講義を行います。そして、商学部・伊藤豪先生が「災害と損害保険」、医学部看護学科・岩永和代先生が「災害医療、トリアージ、高齢者・乳幼児対応」というように学部学科を超えて先生たちが教壇に立ちます。一つのキャンパスに多くの学部学科がそろう本学だからこそ、実現できる内容なのです。 この他にも、福岡市消防局や報道機関、日本気象協会などから講師を招き、気象や消防活動、災害時のマスコミ報道などについても話をしてもらいます。資料や映像を使いながらの、実体験に基づく話はどれも具体的・現実的で、回を追うごとに受講する学生たちの眼差しは真剣味を帯びていきます。 講義外でも学内イントラネットであるFUポータルを活用して復習を兼ねた小テストを行うほか、次回のテーマを前もって紹介し予習を促します。講義以外の時間も「考えること」を意識することで、より理解が深まる仕組みになっています。本科目の単位を取得し諸条件を満たすと日本防災士機構が認定する「防災士」の受験資格を得ることもでき、特に公務員を目指す学生には受験を推奨しています。 重松先生は、「この講義は人間のことを学ぶ『人間学』と言えます」と説明します。 「初回の授業に『自助・共助・公助』という言葉が出てきますが、これは〝公的な助けは来ないものと思い、周囲と協力して自分の命は自分で守ろう〞という意味です。助けのない中で行動するには日頃からの準備と想像力が必要で、その意味では〝想像力を鍛える講義〞とも言えます」 福岡市の場合、参考にすべきは阪神・淡路大震災などの「都市直下型地震」です。ただし災害時に取るべき行動は、季節や時間、場所によって異なります。例えば、早朝に発生した阪神・淡路大震災は寝ていた人が多かったことで避難が遅れ、平日午後に発生した東日本大震災は学校の下校時間と重なり、多くの子どもが犠牲になりました。夏であれば衛生面が課題となり、お昼時であれば火災も懸念されます。そのため「想像力を働かせて行動する」ことが、授業の大きなテーマになっているのです。 もう一つのキーワードは「正常化の偏見」で、「自分は大丈夫だ」と思ってしまう人間心理を理解することです。「ここまでは水は来ない」「今まで壊れなかったから大丈夫」という思い込みを持たないよう、さまざまな事例を知ることで知識を身に付け、想像力を育むことを目指しています。 この講義は共通教育科目で、多くの学生が知識を身に付けるチャンスです。重松先生は「より多くの人が受講し、いざという時に自分で行動できる人になってほしい」との期待を込め、講義の企画、講師陣の調整に奔走しています。日浦 拓海 さん経済学部経済学科 1年次生熊本地震を機に、自分や家族を守るために必要な知識を身に付けようと思うようになりました。報道、天気、心理学など、さまざまな角度から掘り下げた話を聞くことができ、大変参考になっています。目標である公務員になった時に生かせそうな知識をたくさん得ています。山下 翔平 さん工学部化学システム工学科 3年次生テレビで防災関連の番組を見て、防災の知識が必要だと思っていた時にこの授業を知りました。普段は化学や薬品などについて学んでおり、危険物取扱者の資格も持っていますが、知識があるがゆえの思い込みも多く、正しい情報を身に付けることの必要性を感じています。重松 幹二 教授工学部化学システム工学科地球環境の変化が著しい今、社会の動きは、災害を防ぐ「防災」から、いかに被害を小さくするかという「減災」に向かっています。災害をなくすことは難しくても、知識があれば自分の命を守ることはできます。講義で得た知識は一生役立つものです。家族や職場、地域でも議論し、自分がリーダー役となる気持ちを持って、地域の防災力を高めていってほしいと思っています。キーワードは「想像力の養成」と「根拠のない思い込みの排除」26FUKUOKA UNIVERSITY MAGAZINE January 2018Student’s ReactionTeacher’s Comment

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