福岡大学学園通信 No60
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23FUKUOKA UNIVERSITY MAGAZINE January 2018● ●学びと研究研究室を訪ねて誰もが気持ち良く働ける社会へ。国内外で労働法制度を研究企業勤務の経験を基に雇用平等を中心とした研究 所 浩代 准教授法学部所先生は、労働法全般について研究しています。労働法とは、「労働基準法」「最低賃金法」「男女雇用機会均等法」「労働組合法」など、働くことに関する法律の総称です。大学生の頃、雇用平等の分野に関心を持ち、「男女平等賃金」をテーマに卒業論文を書いた所先生。卒業後は大手企業に勤める中で結婚・出産を経験します。しかし復職後、責任ある仕事を任せてもらえず、女性には男性と同じ機会が与えられないことを痛感しました。その後、一念発起して大学院に入学、子育てをしながら、雇用における性差別や障がい者差別について学びを深めました。日本の女性労働者の賃金は、フルタイム労働者の場合で比較しても、男性の約7割に留まります。また、妊娠した女性労働者の2人に1人が出産を機に仕事を辞めています。育休を利用して職場に復帰しても、育児と仕事のバランスを考えて、管理職への昇格はあきらめたという女性が多くいます。このように、残業や転勤を引き受けて出世する男性と、育児のために仕事をセーブする女性では、働き方に違いがあり、その違いが賃金額にも現れてくるのです。格差を解消するためには、「育児と仕事が両立できるようにチームで協力して仕事を効率化し、残業を減らす」「家事育児は男女で分担し、女性の負担を減らす」などが必要だと所先生は指摘します。近年の法制度において、女性活躍推進法や労働時間の上限規制は格差解消のための解決策の一つであると考えられ、「女性が働きやすい職場は、男性や障がい者など誰にとっても働きやすく、職場全体に良い影響が出る」と強調します。海外の事例を研究して、日本に新しい法律を提案することも法学者の重要な仕事の一つです。所先生は2018年8月から1年間、カナダのトロント大学に客員研究員として滞在予定で、「研究の成果をまとめ、雇用の平等につながる法制度を日本に提案していきたい」と言います。近年、日本は女性の活躍や働き方改革に力を入れており、所先生の研究に大きな期待が寄せられます。

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