福岡大学学園通信 No60
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就職・進路 「もうちょっと頑張れ」「良い形になれよ…」。広い作業場でひとり、手元の粘土に語り掛けるその人は、福島善三さん。福岡県朝倉郡東峰村に江戸時代から伝わる陶器・小石原焼の陶芸家です。小石原焼は2017年秋、「重要無形文化財」に指定され、その技法の継承者として、福島さんは重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。人間国宝認定者は、現在全国で115人、陶芸の分野ではわずか11人。57歳という若さでの認定は、まれな栄誉と言えるものです。 福島さんの作風の魅力は、その形の美しさと、天然素材を使って自身で生み出す釉薬(=成形した器の表面にかける薬品)の色合い。粘土や釉薬の原料である長石、鉄鉱石、わら灰などほとんどの素材を地元産にこだわります。小石原焼特有の「飛鉋」や「刷毛目」といった伝統技法を生かしながら、研ぎ澄まされた感性で紡ぎ上げる作品の数々が、高い評価を受けています。 福島さんは1959年、山深く豊かな自然に抱かれた小石原村で、335年続く小石原焼窯元に誕生しました。プラモデル作りが得意で、折り紙を折らせれば裏面の白い部分が見えないように仕上げる器用な手先を持っていました。祖父や父のほか、7人ほどの職人が働く作業場に入っては、空いているろくろを使ってゆう やくとびかんなは  け  め美しさに息をのむ、その一瞬を追い求めて作品と真摯に向き合う福岡大学から巣立った陶芸界の若き人間国宝13FUKUOKA UNIVERSITY MAGAZINE January 20181959年、小石原村(現・朝倉郡東峰村)生まれ。1982年、福岡大学経済学部経済学科卒業。大学卒業直後に家業の小石原焼窯元「ちがいわ窯」に従事。1999年に「第15回日本陶芸展 大賞桂宮賜杯」、2003年に「第50回日本伝統工芸展 日本工芸会総裁賞」など数々の工芸展で賞を獲得。2014年には「紫綬褒章」受章。2017年秋、「重要無形文化財保持者(人間国宝)」に認定された。福島 善三小石原焼陶芸家 「ちがいわ窯」16代目重要無形文化財保持者(人間国宝)OB/OG INTERVIEWZENZO FUKUSHIMA

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