〔研究者コラム〕「ミツバチからのメッセージ(第2回)」―ミツバチの将来を考えるシンポジウム―

私たちの日常でも出会うことがあるミツバチや蝶。ミツバチや蝶が私たちの生活を支えていることを知っていますか?今回のコラムでは、生物学を専門としてミツバチの研究を行っている福岡大学理学部地球圏科学科の藍浩之助教が「ミツバチからのメッセージ」というテーマで5回にわたってミツバチの社会、ミツバチの能力そしてミツバチを取り巻く自然環境についてお伝えします。

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山田敏郎金沢大学名誉教授

ミツバチは、えさを取る際にさまざまな花の匂いを脳で学習・記憶し、再びその花を訪れます。しかし近年、日本の稲作農家で一般的に多く利用されているネオニコチノイド農薬がこの学習・記憶を阻害することや、ミツバチがこの農薬を好んで摂取する性質があることをイギリスの研究者が報告し、話題となっています。また、2016年にイギリスで、ネオニコチノイド系農薬の使用と個体数減少には相関があるということが報告され、早急に解決しなければならない問題となっています。

福岡大学、兵庫県立大学、玉川大学の、セイヨウミツバチ、ニホンミツバチの研究グループは、ミツバチ研究に興味のある方との議論を通して、研究の発展、知識・技術を共有すること目的に、毎年2月にミツバチシンポジウムを開催しています。第6回シンポジウムは2月21日(火)に福岡大学で開催しました。そこでは、ネオニコチノイド農薬がミツバチに与える影響について研究している金沢大学の山田敏郎名誉教授に特別講演を行っていただきました。北は北海道から南は鹿児島まで100人を超える方にご参加いただき、また新聞にも取り上げられ、この問題の関心の高さがうかがえる機会となりました。

ご存じのとおり、農薬はもともと作物を虫害から守るための薬品で、このネオニコチノイドも稲作農家には欠かせないものとなっています。この講演を通して、農作物を作る農家の方と、養蜂家が住み分けできる環境を提供するための技術が必要であると感じました。最近話題の室内農業はその一つの選択肢であろうと思います。

われわれ福岡大学の研究チーム(理学部地球圏科学科、工学部電子情報工学科の共同研究チーム)は、情報科学を駆使したミツバチの行動追跡システムの開発をその将来性についてご紹介させていただきました。今後このシステムを通じて、ミツバチのダンス言語の発達機構の解明や、われわれの住む自然環境をモニターすることにより、生物多様性の保全に役立つ情報と技術を提供していきます。

シンポジウム中から、終了後も多くの養蜂家の皆さまから質問やコメント、さらに新たな研究課題を提案いただき、研究の価値を再認識する機会となりました。ミツバチを住む自然豊かな環境をどのように維持するかを考える会を、これからも定期的に行う予定です。

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養蜂関係者や教員等全国から100人以上が参加

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藍助教が研究グループの成果と展望を講演

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