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「学び」へのステップ 大学から始める『言葉の力』育成プログラム
基礎編⑦(6月3日)を実施いたしました。

2015.06.24



  2015年度第七回目のコトチカ(基礎編)を実施しました。基礎編では、大学での学習に必要な日本語の形式と、グループで学習するための技術を学び、実際にグループで質疑応答のディスカッションを行うことがプログラムの中心になっています。
 第七回目のコトチカのテーマは「子どもにとって尊敬できる大人とは」でした。メディアの発達した現代、いろいろな情報が入手可能になったことに伴って、誰かの欠点やミスについても目立ちやすいものになってしまったのもまた事実です。人間なんて似たようなもので、完全無欠の人なんていないし、みんな近くでよくよく見るといろいろな欠点を持っているものです。そう考えると今は、誰かを「尊敬する」というのもなかなか難しい時代なのかも知れません。
 しかし元来、誰かに敬意を覚えたり、尊敬したりするということは、学び、成長する大きな原動力となるものです。人を尊敬することがかつてより難しくなった現代、子どもたち、ひいては若者たちは、はたしてどんな人たちを尊敬しているのでしょうか。
 受講生たちがまとめてくれたテーマをいくつかリストアップしてみましょう。

1.信念を曲げない大人
2.自分の主張をしっかり言える大人
3.ぶれない大人
4.相手の気持ちが分かる大人
5.状況判断ができて、適切なアドバイスができる大人
6.責任感を教えることのできる大人

 1~3は、どちらかというと積極的に主張する部分に、4は相手を受け止める部分に焦点を当てています。大別すると、その二つに分かれたようでしたが、5のようなメンター的な要素や、6のような道徳的な要素に敬意を感じるという意見もありました。これらのうち最も印象的だったものをひとつ選んで、講評してみましょう。7グループで行われたディスカッションのファシグラ(「ファシリテーション・グラフィック」の略称で、こうした板書のことを言います)です。


※写真は、クリックすると拡大します

 主張は、「自分の意志や考えをもっていて、それを自信を持って言葉にできる大人」です。理由が三つあげられていますが、どれも説得力があります。理由はそれぞれ、意志や考えを持ち、それを自信を持って言葉にすることがいかに難しい状況にあるか、を説明しています。個人的に、特に理由③は読んでいて少し胸が痛みました。われわれ大人は子どもや学生に、「しっかり意見を持て」などと軽々しく言いますが今の時代、自分の意見を持つことがどれだけ難しく、リスクがあることか、そして、子どもや学生がどれだけそうしたプレッシャーを感じているかに、われわれ大人は少し無自覚すぎるような気がします。誰だって、意見をしっかり持ちたいのはやまやまでしょう。しかしそれが難しいのが今の社会環境です(そして、そうした社会にしてしまったのはわれわれ大人です)。だとしたら、そういう状況下でどれだけわれわれ大人が「自分の意志や考えを自信を持って言葉にする」ことができるかが、試されているし期待もされていると考えてもいいのかも知れない、と感じました。特に大学の教職員の皆さん(・・・はこの記事はたぶん読んでいないと思いますが(笑))、身近な学生たちに、ぜひ率先して自分たちの「自分の意志や考えを自信を持って言葉にする」姿を見せてあげて下さい。

 おっと、ちょっと話が講評から脱線してしまいました。さて、コトチカ(基礎編)は今回で終了です。基礎編で学んだことはこれからの授業でも活用できるものがたくさんあるはずです。論理的な思考の方法、質疑応答の技術、司会や書記の心得、など、ぜひこれからの授業で意識して活用してみて下さい。


コトチカ担当:須長一幸

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