福岡大学学園通信 No58
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 長先生は「これからの社会においてプレゼンテーション能力は必須」と話します。「どんなに良い商品やサービスを開発しても、上司や取引先に理解してもらえなければ世の中に出ない」からです。例えば、就職試験の面接は自己プレゼンの場と言え、課題解決に取り組む機会は企業に限らずPTAや自治会など地域社会にも数多くあります。知恵やアイデアを出し、助け合いながら課題を解決していく力は各方面で求められます。社会では自主性と行動力が欠かせません。そこで長先生はLINEやGoogleグループなど、便利なツールの使い方こそ教えるものの、資料の作り方は教えず、手も貸さないようにしています。意識的に「不親切な授業」にしているのも、「あえて困る体験をしてもらい、自分たちで考えなければならない環境をつくるため」と言います。 ディスカッションでの約束事は、「人の意見を否定しない」こと。最初はグループワークで意見が出ず、また時間管理ができずに発表できないグループもありました。そうした場合は、先生が「タイムキーパーを決めるとよい」など、話し合いを円滑に行うためのヒントを出すこともあります。回を重ねていくにつれて自分たちで役割分担をし、誰もが意見を言い合い、異なる意見に耳を傾け、グループの考えをまとめる方法を習得していきます。こうしたディスカッションやプレゼンを通して、学生たちは自分たちで課題を発見することができるようになっていきます。 「今日も他グループの発表を見て、自分たちに足りないものを見つけたと思います。見劣りしたと感じたグループは話し合い、次に良い発表をしてくれるはずです」。 授業終了後、学生たちは「クレドシート」と言う自己分析シートを使い「積極的に案を出す」「自分らしさを出す」など、事前に設定した目標に対する到達度を自己評価します。また「リアクションシート」に授業の感想や気付いたこと、反省点、目標達成に向けた具体策などを書いて先生に提出します。授業を通して自分や他者と向き合い、それぞれの良さを見つけていくのです。 小さな成功体験を積み重ね、課題解決に向けた効果的な議論の進め方を発見し、より良いディスカッションの場を作り上げていくこの授業は、社会に出てからも生かせる内容となっています。 社会との接点を提供するため、後半は地場企業の方を授業に招き、テーマを設定してもらいます。その上で議論を行い、最後は英語でプレゼンをする予定です。よりビジネスの現場に近いスタイルで行われることになり、授業はさらに活気を増しそうです。倉成 桃子 さん人文学部英語学科 2年次生グループでは誰もが意見を言い合える雰囲気づくりを意識していて、お互いを尊重しているところがいいと思います。他の人の意見や議論の進め方は大変参考になります。「クレドシート」に目標をリスト化し、その目標をクリアしていく面白さもあります。菊次 菖 さん人文学部英語学科 2年次生ディスカッションでは自分たちの意見を言い合うだけではいけないと気付き、円滑に議論を進めるにはどうすればよいか学びました。リーダーやタイムキーパーなどグループ内での自分の役割について考え、適性を知るきっかけにもなりました。長 加奈子 准教授人文学部英語学科卒業後は自立した社会人として活躍してもらいたいと願っています。そのために最初の授業で、授業の目的・内容・ゴールをはっきり伝え、その後は学生の自主性に任せています。お互いを尊重しながら課題解決という大きな目標に向かい、失敗と成功を重ねながら目標を達成する喜びを感じてほしいと思います。授業のたびに表情が変わっていく学生の姿や思いも寄らない発表を見て、私も刺激を受けています。自分たちで考え、行動できる力を育む自己分析シートを使って目標への到達度をチェック

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